睡眠を豊かにすれば、生活も豊かになる。不眠症治療で学んだこと

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こんにちは。睡眠コンサルタントの土井です。今回で連載の第13回目となります。前回は、不眠症治療の認知行動療法を実践し、その結果断薬に成功、不眠を克服するまでの治療体験をご紹介させて頂きました。今回は、私自身の経験を踏まえて、不眠治療に取り組むときに必要な「考え方」をご紹介します。
 
不眠治療のカギを握るのは、治療への考え方と、自分の心の持ちようです。

魔法のような不眠改善法はないと思おう

魔法のような不眠改善法はないと思おう

現在、ネットやテレビ、雑誌などには、様々な睡眠の改善法が紹介されています。なかには、「○○するだけで、眠れるようになる」とうたうものも少なくありません。しかし、「○○すれば長年の不眠が治る」という魔法のような改善法は、ないと思ったほうがよいでしょう。
 
もちろん、紹介されるすべての改善法に効果がないというわけではありません。実践してみることで、実際にすぐ眠れるようになることもあると思います。たとえば、寝具が合わず不快でなかなか眠れなかったのが、身体にぴったりな寝具に変えることですぐ眠れるようになった、ということは十分あり得ると思います。しかし、基本的な考え方として、不眠は簡単にすぐ治るとは考えないほうがいいのではないかと思います。なぜなら、「不眠もすぐに治る」と考えていると、結果をすぐに求めたり、自分の睡眠や睡眠習慣を何も見直すことなく外部にばかり原因を求めてしまうからです。
 
そうすると、「睡眠は○○すればすぐよくなる!」という内容にすぐ飛びついてしまい、うまくいかず落ち込んでしまうことが多くなるのです。単にうまくいかないだけならよいですが、実践してもうまくいかないと、落ち込んだり、不眠治療に対して無力感や絶望感を抱いてしまうことも珍しくありません。
 
私が長らく本格的な治療をしなかったのは、睡眠薬への不安感もありましたが、「今までいろんな方法を試してみたけどダメだったから、どうせ病院でもうまくいかない。」という無力感があったからです。やはり基本的には「改善には時間やある程度の努力が必要である」、「治療には腰を据えて粘り強く」というスタンスで臨むのが大切ではないかと思います。
 
「自分の不眠と向き合い、時間をかけて今の自分の何かを変えていかなければいけない」そう決心することで、私自身は改善へ大きな一歩を踏み出せたと思っています。

理想の眠りにこだわりすぎない

理想の眠りにこだわりすぎない

「◯時間眠れるようになろう!」など理想や目標を掲げることは、睡眠の治療や改善法を実践するうえで大切なことです。しかし、あまり理想にこだわりすぎると、自分で自分の首をしめてしまいかねないので注意が必要です。というのも、ひとりひとりの睡眠には非常に多様性があり、一概に理想が◯◯であるということが言えないからです。
 
それにも関わらず、「◯◯せねばならない」という思いに縛られてしまうと、いつまでも理想をかなえることができず、本当は睡眠が改善しているのに自分でそれを実感できなくなってしまう危険性があります。
 
特に睡眠が悪化すると、よく眠れていたときを思い出して、「あのときはよかった。あの時と同じくらい眠れるようになりたい」と思うことが多くなります。それ自体はとても自然なことで、目標として掲げるのはよいことなのですが、ときに眠れていたときをあまりに美化しすぎてしまい、実際よりもよく眠れていたと思う傾向があります。「あの時は毎日ぐっすり眠れていた」、「眠気を感じることはまったくなかった」と事実以上のものにとらえてしまいがちなのです。そうすると、実際は今の睡眠が改善して、以前のような状態になっているにも関わらず、自分の睡眠はよくないと、過小評価してしまうこともあるのです。
 
眠りの満足度には、睡眠時間などの客観的にわかる定量的なことだけでなく、主観的な睡眠に対する思いも影響してきます。理想にこだわりすぎず、基準を少しゆるく考えると治療もうまくいきやすいのではないかと思います。理想を追い求めるのではなく、「今日の自分より一か月後、一年後にどれくらい睡眠を改善させることができるか?」を基準に考えてみると、少し気持ちが楽になるのではないでしょうか。
 
それを積み重ねることで、おのずと理想の睡眠に近づいていくものです。

誰も睡眠を教えてくれない

誰も睡眠を教えてくれない

上述の通り冒頭で少しお話しましたが、今や睡眠に関する情報がたくさん溢れていて、どれを信用すればいいかわからない状態です。「○○すればすぐ眠れる!」といった情報の中には、本当かな?と思う情報も反乱しています。このたくさんの情報の中から、自分に合った正しい情報を選ぶのは並大抵のことではありません。そんな状況では、「誰か、自分に合った改善法を教えてくれ!」と言いたくなることもあると思います。
 
しかし、残念ながら誰も睡眠について教えてはくれません。自分で情報を入手し、取捨選択をしていく必要があるのです。実際に私は不眠で幼少の頃から20年以上不眠に悩んできましたが、自分の不眠の原因を知ったのはつい数年前です。それまでに既に薬での治療も数年間おこなっていましたが、あくまで受動的ですべて先生まかせにし、自分は睡眠について何も知らなかったのです。自ら主体的に情報を集め、睡眠について勉強することでやっと自分の不眠の原因と考えられるものがわかり、認知行動療法という自分に合った治療法にたどりつくことができました。
 
もちろん、病院、特に睡眠専門の病院に行けば、たくさんの情報を得るチャンスがあります。しかし、そもそもそこに行きつくまでの情報は自分で入手しなければいけません。さらに単に病院に行けば、すべてがわかるわけではなく、主体的に治療に取り組み、先生に質問などをすることでやっと自分に合った情報を得ることができるのです。
 
「睡眠は誰も教えてくれない」これが20年不眠に悩んだ私の率直な感想です。だからこそ自分でしっかりと情報を集め、判断していくんだという気持ちが大切です。

自分の睡眠を守れるのは自分だけ

自分の睡眠を守れるのは自分だけ

24時間型の社会である現代は、睡眠が悪化しやすい時代といえます。実際に、現在睡眠に悩みを持っている人は、5人に1人に上るといわれています。夜中でもコンビニの照明が煌々とし、いつでも買い物ができ、明るい室内照明のもとで夜中だろうと時間に関係なく生活ができます。スマホやパソコンなど、脳を覚醒させ、睡眠を妨げるような光を放つものがとても身近にあり、なくてはならないものとして生活に根付いています。
 
夜勤や交代制勤務などで、毎日規則正しく生活できるとも限りません。仕事上、遅くまでパソコンの前でいなければいけないなど、外部環境に左右され、自分ではどうにもできない方もいるでしょう。
 
そんな時代では、いつ誰に不眠が起こっても不思議ではありません。しかし、そんな環境だからといって、不眠や睡眠の病気になっても、誰かが保障してくれるわけではありません。最終的に苦しい思いをするのは、自分です。だからこそ、自分で自分の睡眠を守るという意識が大切です。時には、仕事を含めた生活を見直すことが必要なときもあるはずです。
 
これからは自分で睡眠をケアできる力が重要になってくるのではないかと感じています。睡眠の大切さは失ってはじめてわかるもの。ぜひ大切なあなたの睡眠を守ってあげて下さい。

さいごに:睡眠の大切さが痛いほどわかった20年

さいごに:睡眠の大切さが痛いほどわかった20年

不眠症治療を通してわかったのは、いかに睡眠が大切かということです。眠れるのは、当たり前のことではありません。不眠を克服した今は、ぐっすり眠れるという単純なことのしあわせを日々噛み締めています。
 
眠れない日々が続き、「自分には他の人が当然にできることができない」、「自分には価値がない」と思う時も一時ありましたが、今ではぐっすり眠れることで、毎日元気に過ごすことができています。
 
睡眠を豊かにすることが、生活も豊かにする。そんなことを、不眠症治療でこの上なく実感し、学びました。

photo:Getty Images

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