ブラジル・セアラ州の干上がったセドロ貯水池(2017年2月8日撮影)。(c)AFP=時事/AFPBB News

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【AFP=時事】牛の頭蓋骨がじりじりと照り付ける太陽の下に転がり、そのすぐ近くには腐敗した別の牛の死骸が横たわっている──これは、過去100年で最悪の干ばつに見舞われているブラジル北東部の光景だ。

 畜産農家のカージナウド・ペレイラさん(30)はがっくりと肩を落としながら、ほこりとサボテンの中を歩く。北東部セアラ(Ceara)州ノバカナア(Nova Canaa)にある彼の土地の隅には野外墓地のような一角が作られ、そこに牛やロバ、その他の家畜の死骸、約30体が放置されている。病気の拡大を防ぐためだ。

「ほとんどの動物は飢えや乾きで死んだ。悲しいが、それが現実だ。この5年間の干ばつで多くの動物が死んだ」と、ペレイラさんは言う。

 ブラジル北東部「セルトン(Sertao)」と呼ばれる半乾燥地帯では、人々は雨不足に慣れている。しかし、これほどの干ばつは誰も経験したことがない。2012年以降、降水量はほぼ皆無で、緑のない乾燥し切った風景はまるで山火事が起きた直後のようにすら見える。

 かつて、地域住民らに水を供給していた川や貯水池はすでに機能していない。当局によると、底をついた場所もいくつかあり、現在の貯水量は約6%と推定されている。

 専門家らは、さまざまな要因が重なり、このひどい干ばつが起きているものとみている。太平洋(Pacific Ocean)のエルニーニョ(El Nino)現象、北大西洋(North Atlantic)の水温上昇、そしてセアラ州の気温をこの50年で1.3度上昇させた気候変動だ。

 8州にまたがるセルトンでは、日々の洗濯や飲料用の水でさえ、ぜいたく品だ。政府の統計によれば、同地域に住む2500万人のうち300万人に十分な水を供給することができておらず、都市部を離れれば離れるほどその割合は高くなるという。

 彼らにとっては、貯水槽を満たしに来る政府の給水車が頼みの綱だが、1人当たり1日に約20リットルしかもらえない。世界保健機関(WHO)は、飲料、調理、衛生管理に1日50〜100リットルを推奨しているが、これを大幅に下回っている。

■消えた「生物多様性」

 人々は不足分を補うために、共同でお金を出し合って民間企業による給水を頼んだり、ロバを連れて公共の井戸で何時間も並んだりしている。中には自ら井戸を掘る人もいるが、その水は塩を多く含んでおり、飲料用には向かない。

 大半の世帯は、社会保障と干ばつ対策の緊急支援とを合わせて月に130ドル(約1万5000円)余りを支給されている。だが、追加で給水車を頼むだけで約50ドル(約5700円)かかることを考えると、これはとても十分な額とは言えない。

 畜産農家のクララ・カルネイロさん(67)は「干ばつの1年目は、貯水池にまだたくさんの水があったので問題なく乗り越えることができた。でも今は、これまで以上に節水しないといけない」と言う。彼女はシャワーの水を節約したり、食器洗いに使った水を牛12頭のために再利用したりしている。牛1頭あたり1日100リットルの水が必要なのだという。

 セアラ州キシャダ(Quixada)のセドロ貯水池を見渡すことができる「パラダイス・バー」は営業こそ続けているが、客はほとんどいない。この貯水池は、五輪競泳用プール5万杯以上の貯水能力を誇るが、今や完全に干上がっており、底には数百のカメの死骸や魚の骨が散乱している

 キシャダ州立大学(Quixada State University)で動物の死骸に関する研究に携わるワグナー・ドカルム(Wagnar Docarm)氏は、「ここには多くの魚や両生類、貝などが生息していた。魚を食べる多くの鳥が生息し、豊かな種の多様性があった」と語る。しかし今、それらの生物はどこにもいない。

 ブラジルはこの100年で最悪の不況に直面しており、政府からの支援金給付が遅れることもめずらしくない。そして長く期待されつつも物議を醸している、サンフランシスコ川(San Francisco River)を転流させるプロジェクトは、最大の関係企業が国家的な汚職疑惑に絡んでいたことが発覚し棚上げされた。

 2017年の気象予測を見る限り、貯水池が再び満たされないことも、そしてセルトンの状況が好転することも難しい見通しだ。

 セアラ州キシェラモビン(Quixeramobim)の小さなコミュニティーに住む人々は、助けてくれるのは神だけだと言う。「私たちを助けられるのは天上にいる人だけ。だから祈らないといけない。政治家たちは選挙が終われば、私たちのことなど忘れてしまう」と、この地で農業を営むセバスティアオ・バティスタさん(66)はAFPに語った。
【翻訳編集】AFPBB News