photo by 紺色らいおん

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 企業に対してその過大評価ぶりや会計不正をレポートで指摘し、株価を吊り下げ、利益を上げようとする「空売りファンド」。これまで、伊藤忠商事の不正会計が疑われたり、名物経営者・永守重信氏率いる日本電産は過大評価された「裸の王様」だとこきおろされてきた。現役の東京大学経済学部生にして決算書や各種統計データを読み込み、世間を騒がせるニュースな企業の実態を暴き出し、そのノウハウをまとめた新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』を3月12日に上梓する大熊将八氏が、現在までに狙われた日本企業について、その特徴を掘り下げ、「次に狙われる日本企業」を予想した。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=132407

 空売りファンドは「_畭臧床繊廚、「不正会計」の2パターンで企業を糾弾する。これまで日本で対象になった企業を分類すると、

_畭臧床繊日本電産、サイバーダイン、ユーグレナ、ジグソー、
不正会計:伊藤忠商事、丸紅、SMC

となる。

 まず,亡悗靴董▲拭璽殴奪箸砲気譴燭里脇本電産以外は時価総額が高いベンチャー企業なのがわかる。サイバーダインは介護用ロボット「HAL」の普及を試みるロボットベンチャーで、ユーグレナはミドリムシを燃料にジェット機を飛ばして環境問題を解決しようという壮大な野望を掲げているバイオベンチャーだ。

 2社ともまだほとんど利益は出ていないが、株式市場での高い期待から時価総額は1000億円を超えている。両社は2015年10月の「東洋経済オンライン」のデータによれば、社員1人あたりの時価総額が大きい企業ランキングで、全上場企業中1位と2位にランクインしている(参照)。

 空売りファンドのレポートは当該企業や競合が公表している有価証券報告書や統計データなどのファクトをもとに、これらの企業が期待しているほどの成長を将来的に果たせない、と糾弾している。また、ジグソーに関しては「IoT」や「AI」、「Fintech」など流行りの用語をちりばめた事業計画を打ち出しているものの、実際の研究開発費や人件費を見ると明らかにそうした新技術の開発が行えるはずがない、とギャップが指摘された。

 続いて△亡悗靴討蓮大手総合商社である丸紅と伊藤忠商事に対して、「減損損失」の認識を意図的に回避しているのではないかという批判が行われた。2015年度は資源価格が下落し、三菱商事や三井物産が巨額の減損損失を計上して創業以来の最終赤字に追い込まれるなど不調だったが、丸紅と伊藤忠商事は比較的好調で、特に伊藤忠は「最終益で初めて商社トップに立った」と喧伝された。

◆レポートの指摘後、追加で減損を認識した「丸紅」

 その裏に意図的な減損隠しがあったのではないか、というのは確かにいかにも「空売りファンド」が考えうるケースだ。実際に丸紅はレポートの指摘後、追加で減損を認識し、格付機関は評価を引き下げた。拙著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』でも詳しく解説しているが、減損損失によって、企業が黒字から一気に赤字転落するリスクもある。

 ただ、認識を行っても会計上の利益が押し下げられるだけで、実際に会社が現在保有する現預金を失うわけではない。

 一方、日本の空調機器メーカー大手で、時価総額が2兆円にも達するSMCに対しては、同社が海外に保有すると主張する現預金が少なくとも870億円以上は存在しないのではないか、とレポートで示唆された。有価証券報告書ではなく、その前段階の預金残高の証明書類作成の時点で、不正が行われたのではないかという指摘だ。仮に本当であれば、非常に深刻な不正である。SMCは即座にレポートの内容を否定したが、まだ結論は見えていない。