『リアルプリンセス』寺地 はるな,飛鳥井 千砂,島本 理生,加藤 千恵,藤岡 陽子,大山 淳子 ポプラ社

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「リアルプリンセス」なる立場の人を厳密に規定するとしたら、現実社会においてはごくごく少数の方々しか当てはまらないだろう(よくわかっていないが、王族や皇族の未婚の女性といったら世界で200人くらいのものじゃないの? アメリカ合衆国なんてあんなに広い国だけど1人もいないわけだし)。6つの物語のヒロインたちは、そのような限定的な存在ではない。あなたでも、そしてわたしでもあり得る。

 とはいえ、もとになっているのは確かに「古今東西に伝わるさまざまなプリンセス・ストーリー」だ。出版元であるポプラ社のサイトによると、本書は「人気の女性作家六人が、それぞれが選んだ題材をもとに物語を書き下ろすアンソロジー集」と紹介されている。寺地はるなは鉢かづき姫、飛鳥井千砂は踊る12人のお姫様、島本理生はラプンツェル、加藤千恵はエンドウ豆の上に寝たお姫様、藤岡陽子は乙姫、大山淳子は眠り姫、といった具合(まったく知らなかったおとぎ話もあったけれども。シンデレラや人魚姫といったメジャーどころを除いてもまだこんなにいろんなお姫さまがいるというところに、根強いプリンセス願望的なものを感じさせる)。

 最も印象的だった短編は、加藤千恵「正直な彼女」。主人公である「僕」の恋と結婚の物語。おとぎ話なら「こうしてお姫さまと王子さまは結婚し、幸せに暮らしました」でハッピーエンドだ。だが、現実にはその後に生活が待っている。そうそうドラマティックなことなど起こるわけでもない、平凡な生活が。お姫さまと王子さまたちも「僕」のような気持ちを抱えながら、物語が終わった後の人生をを生きていたのだろうか。

 受け身の姿勢でも幸せが向こうから舞い込んでくるような物語の世界に住むお姫さまたちとは違って、現代を生きる女子たちは自分から行動しなければならない。現実の世界では、王子さまがガラスの靴を持って探しに来てはくれないし、キスひとつですべてが解決するわけでもない。勇気を出すことの大切さ、希望がかなわなかったときに乗り越えられる強さ、ささやかな幸せを愛おしく思える心の豊かさ、そういったものこそに意味があるのだとこの作品たちは教えてくれる。

 本書の作家陣、初めて読んだのが2人、1作品だけ読んだことがあるのが3人、3編以上読んでいたのは1人だけだった。そういった点でもフレッシュさを感じられる内容で、改めていろんな作家の作品を1冊で読むことのできるアンソロジーの魅力に気づかされた。自分の好みに合う作家かどうかちょい読みすることもできるというのも大きなメリットだし、ぜひバラエティに富んだアンソロジーがたくさん編まれますように。

(松井ゆかり)