英国人に人気の観光地、バレンシア州のベニドルム photo by cascalheira via pixabay(CC0 Public Domain)

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 昨年のスペインを訪問した観光者はこれまでの記録を破り、7530万人の訪問を受けた。スペインは米国、フランスと並んで世界の3大観光国である。その中で、英国からの訪問者数が一番多く、昨年は1690万人の訪問があった。Brexitで英国からの訪問者の減少が懸念されていたが、それは見られなかったそうだ。その次がフランスとドイツでそれぞれ1070万人訪問している。英国人の訪問先として好まれているのはバレンシア州のベニドルム市である。そこでは38000部屋を数えるホテルが存在している。やや緩やかな曲線を描きながら続くビーチは6劼竜離があり、冬でも比較的温暖で英国人が好む場所である。昨年のベニドルムでの宿泊客は1170万人で、英国人とスペイン人でその44.4%を占めたそうだ。(参照:『alicante plaxa』)

 そんな英国人に人気の観光地であるスペインだが、最近とあるトラブルが増えているという。

 スペインを観光訪問する英国人の間で、スペインでの滞在を終えて帰国したあとに滞在中のホテルで食中毒の被害を受けたといった理由で英国の悪徳弁護士を通して損害賠償を請求する事件が急増しているというのだ。昨年2016年はおよそ1万件のクレームを受けてスペインのホテルでは6000万ユーロ(69億円)の損出が発生しているという。(参照:『Cope』)

◆被害証明の提出基準が緩やかなイギリス

 彼らの手口というのは、スペインのホテルで宿泊した後に、英国に戻ってスペインの薬局で買った薬の支払いレシートなどを悪徳弁護士に渡して損害賠償を請求してもらうのである。英国では被害を証明する証拠書類の提出規準が緩やかで、しかもそれを利用して利益を得ようとする悪徳弁護士が多くいるそうだ。しかも、英国ではクレームをつけることが出来る有効期間は3年とされており、3歳までの幼児の場合は21歳になるまでクレームをつけることが出来ると法的に認められているそうだ。(参照:『UH Noticias』)

◆背後にいる悪徳弁護士はボロ儲け

 さらに、旅行を企画するツァー・オペレーターもこの様な損害請求の負担は旅行者が宿泊したホテル側が一切負担するというのが基本的な条件にしている。ツァー・オペレーターは旅行者からホテル宿泊費などの旅行費用の支払を受けた後に、そのような不祥事が発生すると、ホテル側への宿泊代金の支払いからこのクレームで発生した損害賠償額を差し引てホテル側に支払うという決まりになっているのである。即ち、ホテル側では旅行者のクレームが偽りであっても、一旦ツァー・オペレーターがそのクレームを了承すると、ホテル側では必然的にその損害費用を負担せざを得ない立場に置かれているのである。

 例えば、保険会社AXAは、契約した旅行者の中で2012年は100人当たりクレームをつけて来る旅行者は0.95人であったのが、2016年には1.6人に急増しているという報告をしている。(参照:『ABC』)

 しかも、クレームをつける旅行者が払い戻しを受ける金額に比較して、それを代行する悪徳弁護士はその10倍の金額を稼いでいるというのである。勿論、その請求総額はホテルが負担することになっている。それ故に、これを上手いビジネスと見た悪徳弁護士は旅行者にクレームをつけるように故意に煽っているというのも事実としてあるそうだ。

 本件で詐欺の事実が認められた場合、スペインの刑法に照らせば、400ユーロ(46000円)以上の詐欺となり、禁固6か月から3年の刑罰が処せられることになっている。(『ABC』)。

<文/白石和幸 photo bycascalheira via pixabay(CC0 Public Domain)>
しらいしかずゆき●スペイン在住の貿易コンサルタント。1973年にスペイン・バレンシアに留学以来、長くスペインで会社経営する生活。バレンシアには領事館がないため、緊急時などはバルセロナの日本総領事館の代理業務もこなす。