妊娠出産にも影響「子宮筋腫」 30〜40代の女性3割、うち半分は自覚なし

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執筆:南部 洋子(助産師・看護師・タッチケア公認講師)
医療監修:株式会社とらうべ

30〜40代女性の約3割もの人がかかっているといわれる「子宮筋腫」。

どのような病気かご存知でしょうか?

「治療が必要ない」という話も聞いたことがあるかもしれません。しかしそれは本当なのでしょうか?

今回は、この子宮筋腫について解説していきましょう。

子宮筋腫ってどんなもの?

子宮は、内側から「子宮内膜」「子宮筋層」「子宮漿膜(しょうまく)」の3層構造になっています。

子宮筋腫は、この中でも子宮筋層の「平滑筋(へいかつきん)」と呼ばれる筋肉にできる良性の腫瘍のことを指します。


子宮は、出口から子宮膣部、子宮頚部、子宮体部と構成されていますが、子宮筋腫は、95%が子宮体部に、残り5%が子宮頚部にできるといわれています。また、稀に膣部で発生することもあるようです。

子宮筋腫は発育の仕方によって、次の3種類に分けられます。

粘膜下筋腫


子宮の内側を覆っている粘膜の下で大きくなり、子宮の内側に向かって発育するタイプ

筋層内筋腫


子宮筋層の内側で発生し、大きくなるタイプ。最も多い。

漿膜下筋腫


子宮漿膜の下で大きくなるタイプ


子宮筋腫は、1つだけ大きくできる場合もあれば、100個以上できる方もいますが、平均的には2〜3個です。

また子宮筋腫の代表的な症状としては、過多月経(月経の経血量が多い)、月経困難症(月経時に日常生活に支障をきたすほどの強い下腹部痛や腰痛が現れる)、下腹部腫瘤感(下腹部に腫瘍がある感覚)やそれによる圧迫症状、頻尿といった症状が現れます。

ただ子宮筋腫を持つ女性の半数は自覚症状がなく、婦人科健診などで発見されることも多いようです。

子宮筋腫は治療をする必要がない?

「腫瘍」と聞くと、怖く感じる人もいるかもしれません。

しかし子宮筋腫は良性のため、がん化して健康な組織を侵したり、転移することはありません。また、子宮筋腫は女性ホルモンの影響を受けて大きくなり、閉経すると小さくなることがわかっています。

そのため、症状や妊娠の希望がなければ、とくに治療を行わずに閉経するのを待つこともあります。

ただし、過多月経の影響で貧血を引き起こしている場合など、症状が出ている場合には薬物療法を行うことや、手術によって子宮筋腫や子宮全体(妊娠希望がない場合)を取り除くこともあります。

実際に治療の対象とされるのは、全症例のうち1割程度です。

ここまでお話した中で、「妊娠の希望」と子宮筋腫の治療の有無が関係していることに触れてきました。これは、子宮筋腫が不妊、出産などに影響を及ぼすことがあるためです。

それはなぜなのでしょうか?

子宮筋腫と妊娠の関係

通常、受精卵は卵管を通って子宮内膜に着床し、妊娠が成立します。

しかし子宮筋腫の中には受精卵が着床するのを妨げるものもあり、その場合は不妊の要因となります。

たとえば、卵管周辺にできた場合には受精卵が移動する妨害になりますし、筋腫が子宮の内側に向かって大きくなる粘膜下筋腫の場合には、子宮内膜に凹凸ができて受精卵が着床しづらい状態になってしまいます。

ですから、子宮筋腫が見つかった時には妊娠の希望の有無を踏まえた上で、治療を行うべきか、またどのように治療するかを検討する必要があるのです。


また子宮筋腫があると、子宮がかたくなってしまうため、たとえ妊娠できたとしても流産や早産のリスクがともないます。

さらに強い陣痛が起らず(微弱陣痛)、分娩が長引いたり、帝王切開が必要になる可能性もあります。

そのため、子宮筋腫ができているときにはその状態を医療者がきちんと管理しながら、妊娠の経過を観察していくことが重要になります。


今回お話したように、子宮筋腫は自覚症状が現れないこともある一方で、妊娠や出産に影響を与えうるものです。

出産に伴うリスクを少なくするためにも、婦人科健診を定期的に受けるようにしましょう。


<執筆者プロフィール>
南部 洋子(なんぶ・ようこ)
助産師・看護師・タッチケア公認講師・株式会社 とらうべ 社長。国立大学病院産婦人科での経験後、とらうべ社を設立。タッチケアシニアトレーナー


<監修者プロフィール>
株式会社 とらうべ
医師・助産師・保健師・看護師・管理栄養士・心理学者・精神保健福祉士など専門家により、医療・健康に関連する情報について、信頼性の確認・検証サービスを提供