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インターネットに溢れる情報から旬なキーワードをプロの視点でお届けする「インターネット鵜の目鷹の目」。今回注目のキーワードは「AI」です。

目に見える形で現れてきた「AI」

すでに人間の能力を凌ぐものも



最近、一般的なニュースなどでも「AI」というワードが普通に扱われるようになり、いよいよ多くの人に浸透してきたように思われる言葉「AI」。「Artificial Intelligence」の略で、読んで字のごとく「人工知能」を指します。コンピュータ上で人工的に作られた“人間同様の知能の実現”を指す言葉であり、中でも「ニューラルネットワーク」を用いた深層学習の結果が、私たちの目に見える形で、続々と商品やサービスとして提供され始めています。

ニューラルネットワークとは人間の脳の神経回路の仕組みを人工的に模し、コンピュータに学習させるモデルです。莫大な量のデータを凄まじいスピードで学習し、その結果を用いて改善と試行を繰り返し、さらに精度を高めていくという特徴があります。

例えば、三菱電機やNTTコミュニケーションズは、防犯の分野において、監視カメラに「AI」を採用。不審者の動作検出の実証実験にこちらを役立てています。これまでも、どんな動きで、どんなスピードで、どんな格好の人物が“不審者”かといったパターン設定をあらかじめ行えば、それらの条件に合致した映像画像を認識することはできていましたが、深層学習を使った「AI」の場合は、定点カメラで撮影された実際の不審者の映像を読み込ませて、それらの映像から不審者が持ちうる“共通点”を自動で見い出し、回答を導き出し続けるという点で異なります。



(参考: 三菱電機とNTTコミュニケーションズが、監視カメラを用いた新たなソリューション提供で協業)

さらに導き出された回答に対して、それが正解か不正解かのデータを常にフィードバックし、判定基準に継続的に盛り込むことで、精度は時間の経過に比例してどんどん高まっていきます。人間では実現不可能な回数の試行と、それに対するフィードバックを、凄まじいスピードで休みなく行い成長できるのです。まるで漫画『ドラゴンボール』シリーズにおける“精神と時の部屋”で成長した悟空たちのように。なぜなら、同じことを反復して実行していくことは、人間よりも圧倒的にコンピュータの得意分野だからです。

これらの技術は、例えば駅構内や空港などの交通機関での応用も期待されます。“道に迷っている人”、“酔っぱらいの不審な動き”などに対して、その施設スタッフや従業員にアラートをいち早く伝えるなど様々な用途への応用が考えられます。さらに重要な分野として、医療分野での応用も、この先超高齢化社会を迎える日本では必須かもしれません。例えばがんの検出については、「AI」の解析により大量のCT画像を参照・比較することで、医師のがん診断を支援する研究が進められています。

また、日本経済新聞社やNTTデータが、「AI」による原稿の自動生成の実証実験に取り掛かっているのをご存知でしょうか?



(参考: 完全自動決算サマリー by NIKKEI)

SNSでも話題となった日本経済新聞社の『決算サマリー(Beta)』は「AI」で原稿作成行なっており、すでに私たちは「AI」が作成した原稿を読むことができるのです。NTTデータも気象庁が作成する気象電文から、アナウンサーが読み上げる天気ニュース用の原稿を自動生成する実験に成功しています。

「AI」は人類全体を自由にする?

特権階級が「AI」で支配する?



このように、学習や訓練によって習得、上達できる仕事は「AI」が特に得意とすることで、次々と実用レベルに達しているものがみられるようになってきました。人間がやると、どうしても面倒くさいルーティンワークも、コンピュータは不平を言うことがありません。しかし、その一方で、例えば「AI」による株式や為替の売買や、近年実験されている“裁判官AI”などの登場については、人間が「AI」に支配されるのではーーと、畏怖の念を示す人が数多くいるのも事実です。

また、音楽プロデューサーでグラミー賞受賞者のAlex Da Kidは、人工知能を活用したヒット曲制作の実験をIBMと共に始めました。



(参考: IBM Watson Music)

これは曲のテーマ、歌詞、コード進行等を、世界中の人気映画や雑誌の表紙、過去の数万曲におよぶヒット曲などから、「AI」が解析したデータを元に大ヒット曲を作ろうという壮大な試みです。現時点では、人工知能はあくまでも補助・アシスタントにすぎませんが、いつの日か人工知能が作詞作曲した楽曲が、チャートを席巻する時代が到来する予感さえします。

こうなると人間が「AI」を使っているのか、それとも「AI」が人間を使っているのか分からなくなってきますよね。でも、安心してください。

電気自動車の開発で知られるテスラモーターズのCEOイーロン・マスク氏が、人間の脳と「AI」を連携させる「ニューラル・レース」について、近いうちに何かしらの発表を行う予定とされているからです。マスク氏によると、これは「人間が“AIの飼い猫”にならないための技術」とされており、人間が脳と「AI」を直結し、「AI」の恩恵を受けれるような仕組みなのでは、と僕は予想しています。

人間が“試行の繰り返しに要する時間”や“何かを記憶すること”から解放され、考えることに全てを集中できる時代がすぐそこまで来ています。そうなったときには、人間はさらなる“自由”を手に入れることができるでしょう。

ただしその恩恵を受けられるのは「ニューラル・レース」を購入できる限られた人だけ--。それらを持たない人々は、様々な面で「ニューラル・レース」購入者に支配される……そんなディストピアが来ないことをただ祈ります。

文/世永玲生

※『デジモノステーション』2017年3月号より抜粋

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