公式戦では初顔合わせとなった風間親子。次男・宏矢(左)は父のチームとの対戦を「楽しみにしていた」という。(C) SOCCER DIGEST

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 J2リーグ2節の『名岐ダービー』、名古屋対岐阜は、公式戦では隣県同士の初めてのダービーとなったが、風間家にとっても初の公式戦での親子対決となった。
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 今季からJ2で戦う名古屋を率いる風間八宏監督と、岐阜に移籍して3シーズン目を迎えるMF風間宏矢。風間家の大黒柱と次男の対決だ。それは、次男の宏矢にとってはかつての指揮官でもある父に、成長した姿を見せる格好の舞台でもあった。
 
「ベンチに父親がいることが不思議な感じでしたが、楽しみにしていた一戦でした」
 
 アップの時から宏矢の表情は引き締まり、気迫に満ち溢れていた。風間監督は自らを育ててくれた父であり、川崎ではプロデビュー時の監督であり、かつチームを離れる際の監督でもあった。人生の厳しさ、楽しさ両方を教えてくれた存在であり、サッカー人として尊敬する父としての存在。彼にとってこの一戦はただの試合ではなかった。
 
「試合に入ったら相手がどこであろうが関係なく、無我夢中だった。でも、前半から飛ばしていこうと思った」
 
 気持ちの昂りはプレーに現われた。宏矢は前半から前線のボールの収まりどころとして、精力的に動いた。3トップの頂点に位置し、守備時は積極果敢なフォアチェックで敵最終ラインにプレスを掛け続ける。マイボールになったら、裏に抜けるだけでなく、ディフェンスラインとボランチの間に落ちてボールを収め、サイドに展開するなど、攻撃のリズムを作り出していた。
 
 宏矢と2シャドーの一角に入った期待のスペイン人MFシシーニョとの連係も良好で、シシーニョが前向きでボールを奪うと、素早い動き出しでボールを引き出し、名古屋の守備の間隙を突いた。
 
 前半、格上の名古屋に対し、完全にペースを握ると、後半は名古屋の巻き返しに遭うが、常に攻撃意識を持ちながら、宏矢は前線で危険な存在になり続けた。72分に足が攣り、MF山田晃平との無念の交代となったが、チームはその7分後にMF田中パウロ淳一のゴールで先制。90分に追いつかれるが、価値あるドローという結果を手にした。
「素直に楽しかった。ダービーだからという理由ではなく、観に来てくれた人たちもサッカーの試合として楽しんでくれたと思う。改めて父が率いるチームは素晴らしいなと思ったし、純粋に戦って楽しかった」
 
 父のイズムを植え付けられたチームが、目の前の敵として立ちはだかり、敵将である父の目の前で、今自分が持てる力を存分に発揮できた。だからこそ、彼の口からは『楽しかった』という素直な言葉しか出てこなかった。
 
 次の対戦は9月30日か10月1日。リーグ戦も終盤に差し掛かる時期だけに、当然お互いに今回の対戦よりもチーム戦術はより浸透しているはず。その時はさらに『風間イズム』が染み込んだ相手と戦わなければならない。
 
「まだまだ。フルに戦えないといけないし、もっと上手くなりたい」
 
 次回の対戦までにさらに成長した自分の姿を父の前で披露するために、風間宏矢はさらなる自己研鑽に励む。
 
取材・文:安藤隆人(サッカージャーナリスト)