センターバックで、熊谷紗希の相方として頭角を現した中村楓 ようやく新生なでしこが一歩を踏み出した。相手に完全に飲まれたスペイン戦、できることから徹底的に見直したアイスランド戦を経て、ノルウェーとの第3戦で、このチームの基礎がわずかながら見え始めた。

 立ち上がり、いきなりアダ・ヘゲルべリに左ポスト直撃のシュートを食らい、カロリーネ・ハンセンにクロスを合わせられるなど、ノルウェー2トップの洗礼を真っ向から浴びた。そこをDF陣が体を張ってなんとかしのぎ、落ち着きを取り戻すことに成功。ここで失点しなかったことが、日本を完封勝利へと導くことになる。

 この試合の最終ラインは、熊谷紗希(リヨン)と中村楓(アルビレックス新潟L)がアイスランド戦に続いてセンターバックを組み、右に高木ひかり(ノジマステラ)、左に佐々木繭(ベガルタ仙台L)が入った。立ち上がりこそバタついたものの、熊谷が常に、守備陣のポジションに修正をかけながら最終ラインを組み立て直していく。その結果、後半に入るとバラつきはなくなり安定感が増した。

 カギは中村の動きにあった。もともと1対1の強さには定評があるが、代表経験が少ない。熊谷とのコンビもアイスランド戦が初めてだった。そこで熊谷はそれぞれの役割を明確にし、アイスランド戦でそれを示してみせた。互いの距離感、ビルドアップのタイミング、そして最も重要視したのがカバーリングだ。

 フィジカル面から考えても、スピード勝負に持ち込まれると分が悪い日本は、ラインコントロールに神経を使い、攻撃のために高い位置まで自らボールを運ぶこともしばしば。そこから生まれる好機は多いが、その際に空いたスペースのリスク管理は必須だった。

 中村は冷静かつ確実に、熊谷がピンチを摘み取るときや、攻撃の構築に関わる際のカバーリングをこなしていく。17分には、昨年度のフランスリーグ及びチャンピオンズリーグ得点女王のアダ・ヘゲルべリに、スピードで一気にバイタルエリアまで運ばれたが、体を寄せてラインを割らせる対応を見せた。

 もちろんすべて完璧とはいかず、出遅れたために完全に振り切られることもあった。49分にも訪れたアダ・ヘゲルべリとの勝負は、強烈なシュートを許してしまう。これはGK池田咲紀子(浦和レッズL)のファインセーブで逃れたが、体を寄せに入った段階ですでに、後手に回るタイミングだった。

「寄せる寄せないの判断が遅いとスピードに対応できない。ラインコントロールも課題」と本人は反省しきりだったが、それでも熊谷のピンチを助ける場面も一度や二度ではなく、その動きは次第によくなっていった。フィードの精度など、これから克服すべきことは少なくないが、それが可能性というものだろう。熊谷との相性もよく、楽しみなセンターバックが現れた。

 日本がスコアを動かしたのは、エンドが変わった59分、高木から運ばれたボールを籾木結花(日テレ・ベレーザ)がつなぐ。横山久美(AC長野)が放ったシュートはGKの手を弾き、ポストを叩きながらのゴールとなった。

 さらに終了間際には、途中から入った田中美南(日テレ・ベレーザ)のヘディングシュートが、左ポストに跳ね返されたところを横山が押し込んで、ダメ押しとなる2点目を挙げた。「あれはごっつぁん(ゴール)です」と横山は振り返る。

 しかし、そのチャンスは横山自身が生み出していた。横山が仕掛けてゴール前に迫ったとき、相手DFが体を寄せてきた瞬間、シュートではなく右サイドに上がっていた中里優(日テレ・ベレーザ)に一押しでパス。結果的に中里の折り返しから、田中のシュートへとつながっていた。

 この最後の一押しが出たことに横山の成長が見える。これまでの横山ならば、ほぼ90分間走って、前線からプレスをかけ続けた後の、あの一歩は出なかったに違いない。「それどころか、途中交代させられてましたよ」と横山自身も変化を感じている。

 彼女の課題は、とにかくスタミナ。ほんの1年半前までは、国際試合で90分間もたない選手だった。なでしこジャパンを体感することで確実に変わったのは、体力作りへの意欲だ。地道にコツコツとトレーニングを重ねて持久力をつけた。その成果が今大会、最後の一歩の伸びにつながった。

 先制点を挙げたあとも、横山は実にクールだった。

「これまで、代表で1点は取れても1試合で2点はなかったので、そこを意識していた」(横山)から喜べなかったのだという。初戦ではスペインに一矢報いる1ゴール、アイスランド戦ではアシストで長谷川のゴールを導き、ノルウェー戦で秘めた想いが詰まった2ゴールを挙げた横山。

「やっとノーマル(人並み)になった。ここからです」

 彼女にとって、「前線での守備に貢献」して「ゴールを決める」ことは2つで1つ。それを90分間やり続けることが”ノーマル”なのだ。ここがスタートであるならば、この先の伸びしろを想像すると頼もしい。

 努力で弱点は強みに変えることができる――。横山の姿は今の若いなでしこたちにとって、何よりも大きな刺激になるだろう。

 初戦直後から、急激に増えた選手間のコミュニケーション。弱点を炙り出し、ひとつずつ潰していく日々が続く。その中で第2戦に引き続き、2-0で完封勝利を手にしたことは、選手たちにとって自信になっていく。もちろん、攻撃面では左右サイドで偏りもあり、コンビネーションに欠けるセットプレーなど、早急に改善したい課題は山積している。今大会、最終戦となるオランダとの5、6位決定戦で、攻撃がどう変化しているかにも注目したい。

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