将来火星を人類が居住できる環境にするため、火星と太陽の間に人工的な磁場を発生させ、太陽風を防ぐことで火星の周囲に大気層を作る――。そんな大胆な計画を、米航空宇宙局(NASA)の科学者らがこのほど提案した。

太陽風を防ぐとなぜ環境が改善するのか

NASAは2月27日から3月1日にかけて、「惑星科学ビジョン2050」と題したワークショップを開催。火星の環境を改善する計画(PDF)はこのなかで提案された。

火星には現在ごく薄い大気しか存在しないが、かつて液体の海に覆われていたと考えられ、地表の一部や地下には大量の氷があることがこれまでの調査でわかっている。

太陽から放射される太陽風には高エネルギーの粒子が含まれ、強い浸食作用により火星の地表で蒸発した水蒸気を吹き飛ばしてしまう。この太陽風を人工磁場でさえぎることができれば、大気の損失が止まり、シミュレーションによると数年のうちに気圧が地球の半分ほどに上昇。気温も摂氏約4度に上昇し、北極の極冠にある二酸化炭素の氷を溶かすようになる。この結果、大気中の二酸化炭素が温室効果をもたらし、さらに火星の氷を溶かして川や海の形成を助けるという。

人工磁場を保つ方法

では、どうやって長期間にわたり宇宙空間に人工磁場を保つのか。NASAの提案では、火星と太陽の重力が均衡するラグランジュ点の1つ(L1)の位置に、人工的に磁場を発生させる装置を宇宙船で運んでから「置く」ことで、その後は火星と太陽の間で相対的な位置を保ち続けるという。

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NASAが示したイメージ図によると、この磁場発生装置の影響により、磁気鞘(しょう)、磁気圏界面、磁気圏尾という3層のシールドが出現。これらのシールドにより、太陽風の浸食作用を大幅に低減できるとしている。

提案によると、この磁場を発生させる装置に必要な磁力(磁束密度)は1〜2テスラ程度。ちなみに、山梨県で試験中のリニアモーターカーには1テスラの超電導磁石が使われているといい、磁力だけに限って言えば既存の技術で実現可能ということになる。

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地球化された火星のイメージ Ittiz/Wikimedia Commons

高森郁哉