イランの名匠ジャファル・パナヒ監督 (C)2015 Jafar Panahi Productions

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 イラン政府によって2010年から“20年間の映画製作禁止令”を受けながらも、不屈の精神で撮り上げた「人生タクシー」が第65回ベルリン映画祭金熊賞を受賞したジャファル・パナヒ監督が、胸中を語った。

 本作では、パナヒ監督自らがタクシー運転手に扮してテヘラン市街を回り、乗客との車内での会話からイランの“今”を掘り下げている。死刑制度について議論する路上強盗と教師、海賊版レンタルビデオ業者、交通事故にあった夫と妻、映画監督志望の大学生、金魚鉢を抱えた2人の老婆など、それぞれに事情を背負った人物たちが登場し、十人十色の人生模様がつづられる。

 カンヌ・ベネチア・ベルリンの世界3大映画祭を制した名匠ながら、反政府活動によってこれまでに2度逮捕され、86日間の拘留も経験しているパナヒ監督。映画製作・脚本執筆・海外旅行・インタビューを20年間禁じられ、違反すれば6年間の懲役を科される身だが、11年に製作された「これは映画ではない」では状況を逆手にとって軟禁生活を映像に収め、映像が入ったUSBファイルを菓子の箱に隠して国外へ持ち出し、第64回カンヌ国際映画祭などで絶賛を集めた。本作もまた、逆境に屈することなく貪欲に作り上げた意欲作だ。

 パナヒ監督は、「政治家たちは、私たちが映画祭や外国の観客のために映画をつくったことをいつも非難します。彼らは政治という壁の後ろに隠れていますが、私たちの映画がイランで公開できないということを忘れています」と痛烈に批判。「もし彼らが私たちの映画をイランのスクリーンで公開する許可を出せば、国外で公開される事態への懸念はなくなるでしょう。それは同時に、イラン映画を外国でよりよく知ってもらうことにつながります。イランの映画人は、誰もが自分の映画がまず国内で公開されることを願っています。しかし政治の壁が、そうしたことをはばんでいるのです」と苦悩を明かしている。

 「人生タクシー」は、4月15日から全国順次公開。