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大阪市立大学(大阪市大)は3月3日、身体活動性と関連のある筋肉由来タンパクであるマイオカインと慢性閉塞性肺疾患(COPD)の病理学的変化である気腫化との関連性を明らかにしたと発表した。

同成果は、大阪市立大学医学研究科呼吸器内科学の大学院生杉山由香里氏、浅井一久講師、平田一人教授らの研究グループによるもので、3月2日付けの国際学術誌「International Journal of Chronic Obstructive Pulmonary Disease」に掲載された。

COPDは慢性呼吸器疾患のひとつで、間接喫煙を含むタバコ煙、大気汚染などによる有毒なガスや微粒子の吸入により肺胞の破壊(気腫化)や気道炎症が起きることにより生じる。現在のCOPD治療は、気腫化により低下した肺機能を気管支拡張剤により部分的に改善するに留まり、本質である気腫化の治療・予防を標的とした治療方法はなかった。

一方、運動により脂質異常症、糖尿病等の代謝性疾患の病状改善が期待できることが一般に知られており、近年、この機序に筋肉由来のマイオカインの一種であるアイリシンの細胞死抑制効果の関与が明らかになってきた。同研究グループはこれまでに、COPD患者の血中アイリシン濃度が健常人にくらべて低下していること、また運動により改善することを見出しており、COPD病態におけるアイリシンの関与の可能性が推定されていた。

今回、同研究グループは、40名のCOPD患者(平均年齢73歳、男性32名、女性8名)を対象とし、血中アイリシン濃度と肺機能検査、胸部コンピュータ断層撮影法(CT)を実施。その結果、血中アイリシン濃度は身体活動性と相関を示し、胸部CT上の低吸収域(気腫化)は、血中アイリシン濃度と強く逆相関していることが明らかになった。

また、気腫化の原因のひとつとして、タバコ煙中のオキシダントによる肺胞上皮細胞のアポ トーシスが知られているため、アイリシンのタバコ煙によるアポトーシスへの影響を検討する細胞実験を実施したところ、アイリシン処理によりタバコ煙によるアポトーシスは強く抑制されることがわかった。さらに、アイリシン処理された肺胞上皮細胞における抗酸化能を評価するために抗酸化タンパク質であるNrf2を定量したところ、アイリシンによりNrf2の発現が増強されていることも明らかになった。

同研究グループは今回の成果について、COPDの治療薬である気管支拡張薬やリハビリテーションによる身体活動性維持・改善に加えて、アイリシンを介入点とするCOPDの予防・治療法の可能性が示されたものであると説明している。

(周藤瞳美)