週末ごとに左右両派のデモが開かれる AP/AFLO

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「韓国はみんな狂っている、まともではない」。ネット掲示板かと見紛うタイトルのついたコラムが、1月27日、韓国最大の日刊紙・朝鮮日報に掲載された。執筆者は日本特派員の経験もある朴正薫論説委員。〈国家が理性を失いつつある〉とまで自国を評した内容は、大きな反響を呼んだ。

 同コラムで朴氏は〈大衆の暴走が攻撃性を帯び暴力化する〉との危うさも指摘する。韓国の次期大統領選挙の投票日が5月10日頃と予測され選挙戦が本格化しているなか、〈刺激的で煽情的であるほど、大衆の人気は上がっていく。政治家は迎合する〉と警鐘を鳴らしている。ソウル在住ジャーナリスト・徐台教氏がレポートする。

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 朴正薫氏はコラムで〈トランプ台風や中国の脅威と国外に憂慮の種は尽きない〉と外交に目を向ける。韓国の「国政の空白」は5か月にわたって続いており、外交分野にも多大な影響が出ている。

 最大の同盟国・米国ではトランプ新政権が発足したにも関わらず、韓国の指導部はまともな関係を築けていない。北朝鮮はもちろんのこと中国とも緊張状態が続く。だが、朴氏が真なる敵と見定めるのは、内なる病理ということが次の文章から分かる。

〈国家は他殺されない。外敵がくる前に内部の矛盾により自滅する〉〈自滅要因は利己主義とポピュリズム。大衆が目前の利益に揺れ動き、支配するエリートが迎合する時に国家が衰亡する〉

 たしかに今の韓国では「すべてが非正常」といえる。18週続く数十万単位の週末デモ、長期にわたる大統領不在と外交危機、激しい攻防の弾劾裁判、終わりの見えない崔順実ゲート、そして混乱の収拾はおろか拡大をもたらすかのような大統領選挙。

 当初はこの非正常を、正常な未来に向けての我慢すべき過程と考えていた国民にも、そして盛んな報道でけん引してきたメディアにも疲れがありありと見える。

 そのせいか、最近では「法治」を主張する声が高まっている。韓国三大紙の一つで中道右派の「中央日報」は2月16日付の社説「ひたすら憲法の価値で判断してこそ不服を防げる」の中で〈歴史的な(弾劾)審判を静かに見守ろう〉と呼びかけた。また、左派系の日刊紙「ハンギョレ」の論説委員キム・イテク氏は同じ16日に「大統領を選ぶことよりも大事なこと」というコラムの中で、こう論じる。

〈保守と進歩を超え、大部分のメディアが国政ろう断を報じたことが1000万人以上のろうそくを集めた。これを法と制度に昇華させよう〉

 韓国メディアはここにきて右も左も基本理念に立ち返ることを求めている。とはいえ、筆者の周囲の喧騒をみる限り、韓国の陣痛はまだまだ続きそうだ。

【PROFILE】1978年生まれ、群馬県出身の在日コリアン三世。日韓で北朝鮮報道に携わったのち、現在はソウル在住。ニュースサイト「韓国大統領選2017」(http://kankoku2017.jp)の編集長を務める。

※SAPIO2017年4月号