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 韓国で、ある動画が話題を呼んでいる。ユーチューバーが知的障害者に暴言を浴びせたことを直接謝罪している動画だ。動画はチャンネル登録者数40万人を超す人気ユーチューバーのキム・ユンテ氏が2月14日にアップしたもので、「お訪ねして謝罪しました」というタイトルが付けられている。

 彼は動画で、知的障害者であるイ・ドンヒョク氏の前で膝をつき、「人格を侮辱する発言をして申し訳ない」「多くの視聴者が見ている前でからかったことを謝罪する」などと発言。イ氏はうなずいて謝罪を受け入れた。

 一体、キム氏は何に対して謝罪したのか? 事の発端は、その前日の13日だった。

 この日、キム氏はイ氏を自宅に連れ込み、YouTubeの生放送を行った。そこでキム氏は「一般人より劣っている障害者」などと暴言を連発。「お前のせいで、お前の親も指をさされる」と、イ氏の両親までも侮辱したのだった。

 もっとも、彼は理由もなく暴言を吐いたわけではない。原因はイ氏が自分の個人情報を流出させたことにあると、キム氏は主張する。

 生放送の後にキム氏が投稿した「イ・ドンヒョク氏事件 解明動画」によれば、「イ氏が私の口座番号と住民登録番号、過去の住所を調べ、自身のYouTubeチャンネルにアップした」のだという。動画では「事情も知らないネット民たちが私を非難することは、理解ができない」とも弁明した。

 その説明に対し「憤るのも無理はない」と同情するユーザーはいたものの、「法的に解決すべきだった」「事情はどうあれ、何千人、何万人が見るインターネット放送で障害者に悪口を言うのは許しがたい」と、“私刑”ともいえるキム氏のやり方に、さらに怒りをヒートアップさせるユーザーが多かった。

 その批判を受け、キム氏は翌14日、イ氏を訪ね、公開謝罪動画をアップしたのだった。現在キム氏は反省の期間を設けるとして、動画投稿を自粛している。
 
 韓国で動画投稿者のモラルが問題視されたのは、今回が初めてではない。ユーチューバーやBJ(韓国版ニコ生主)がアップする動画が、単なる面白さの追求から逸脱しているという指摘が続いている。

 ここ最近に限っても、パンツ一枚でコンビニに入る動画や、他人が使用中の個室トイレのドアを蹴りまくる動画などが問題となった。さらには、通行人にいきなり水をぶっかける動画まであり、視聴者たちは不快感をあらわにしている。

 警察沙汰になる事例も少なくない。例えば2016年5月には、あるBJが前を走る車を追いかけ回す様子を生中継し、道路交通法違反の容疑で立件されている。別のBJはセックスの様子を配信し、やはり警察に立件されている。

 韓国の放送通信審議委員会によれば、インターネット放送の審議件数は、15年が257件だったのに対し、16年は718件と3倍近くにまで増えている。これを受け、同委員会は16年11月に「インターネット放送モニタリング団」を発足させ、監視体制の強化に乗り出した。

 日本でもチェーンソーを持ったユーチューバーがヤマト運輸を脅迫した動画や、お店で代金を支払う前に飲食する動画などが問題となったが、お隣・韓国でも個人放送のモラル逸脱が社会問題となっているのだ。今回の“公開謝罪”騒動は、氷山の一角にすぎないのである。

 問題が加速する要因としては、再生数が伸びれば収入が上がるという構造や、動画制作・投稿が手軽になるにつれ、競争相手が増えたことなどが挙げられている。過激な動画をアップしなければ生き残れないというわけだ。しかし、だからといって、モラルを欠いた個人放送が許されるわけではない。

 果たして、韓国のモラルが低下したのか、それとも、もともと低いモラルが表面化しただけなのか……。
(文=李仁守)