2007年にフットサル「Fリーグ」が創設されて以来、9シーズンにわたって頂点に立ってきたのは名古屋オーシャンズだった。他クラブよりはるかに多い年間予算を持ち、リーグで唯一の完全プロフットサルクラブである名古屋は「絶対王者」と呼ばれ、その地位は揺るがないかと思われた。


初のFリーグ王者に輝き、胴上げされる木暮賢一郎監督 しかし、2016-2017シーズンに入り、ついにその歴史が変わった――。新たに頂点に立ったのは、シュライカー大阪だ。

 最終的にFリーグのシーズン優勝は、上位5チームで争われるプレーオフの結果で決まる。プレーオフはレギュラーシーズン2位のクラブと5位のクラブ、3位のクラブと4位のクラブが対戦する「ファーストラウンド」(引き分けの場合はレギュラーシーズン上位のチームが勝者)、その勝者同士が対戦する「セカンドラウンド」、そしてレギュラーシーズン1位のチームとセカンドラウンド勝者によって行なわれる「ファイナルラウンド」の3つのラウンドに分かれている。

 プレーオフのファーストラウンドとセカンドラウンドは一発勝負で行なわれ、ファイナルラウンドは2試合が予定されている。ただし、第1戦でレギュラーシーズン1位チームが勝利、もしくは引き分けだった場合は、その時点でレギュラーシーズン1位チームの優勝が決まる。セカンドラウンドを勝ち上がったチームが勝利した場合のみ、第2戦が行なわれるが、この試合も引き分け以上の結果でレギュラーシーズン1位チームの優勝が決まる。つまり、セカンドラウンド勝利チームが年間優勝の座を掴むためには、ファイナルラウンドで2連勝するしかないのだ。

 Fリーグのプレーオフが始まった2012-2013シーズンから昨シーズンまで、名古屋は常にレギュラーシーズンで1位になっている。2014-2015シーズン、大阪は就任1年目の木暮賢一郎監督のもと、プレーオフ・ファイナルまで勝ち上がった。プレーオフ・ファイナルでも初戦に勝利したが、2戦目で引き分け、延長戦の末にシーズン2位となった(当時はレギュラーシーズン1位のチームに1勝のアドバンテージが与えられており、2試合の結果で1勝1分けの場合は延長戦で優勝を決定するレギュレーションだった)。

 そうした苦い思いをしていた木暮監督は、Fリーグを制するため、レギュラーシーズンで1位になれるチームづくりを目指したのだ。

 監督就任1年目、木暮監督はチーム内の世代交代を行なった。2年目はその若い選手たちに出場機会を与え、経験を積ませてチームの基盤をつくり、3年目には海外から有力な外国籍選手を獲得して一気にチームの力を高めた。このプランが成功した今季の大阪は、ブラジル人トリオが合計113ゴールを叩き出す活躍もあり、史上初めて名古屋を抑えてレギュラーシーズンで1位となった。

 大阪の後塵を拝してレギュラーシーズンを2位で終え、逆転でのFリーグ10連覇を目指した名古屋は、プレーオフ・ファーストラウンドでリーグ5位の府中アスレティックF.C.と対戦した。2度のリードを許す苦しい試合展開となったが、キャプテンのFP(フィールドプレーヤー)星龍太がミドルシュートを決めて2-2の同点に追いつき、勝たなければならない府中の攻撃をしのぎ切ってセカンドラウンド進出を決める。もう一方のファーストラウンドでは、レギュラーシーズン3位のペスカドーラ町田が同4位のフウガドールすみだを7-2で圧倒した。

 セカンドラウンドの名古屋vs.町田の一戦は、因縁の試合としても注目を集めた。昨シーズン、9連覇を達成した直後に名古屋は、当時のエースであるFP森岡薫に戦力外通告を行なった。その森岡が加入したチームが、町田だったからだ。

 名古屋がリーグ10連覇へ望みをつなぐか、もしくは森岡が個人でのリーグ10連覇の可能性を残すのか――。因縁の試合は、前半6分に森岡が挙げた先制ゴールで勢いづいた町田が3-0で名古屋に勝利して決着する。試合後、名古屋を率いたペドロ・コスタ監督は「ストライカーを獲得するべきだった」と、森岡に代わる新たな得点源を獲得できなかったことを敗因に挙げた。この結果、名古屋の連覇は「9」で止まり、Fリーグは10年目の節目に新たなチャンピオンが誕生することになった。

 3月3日に行なわれたプレーオフ・ファイナルラウンドの第1戦。勝利が絶対条件の町田は、開始40秒で森岡が左太ももを負傷してしまう。エースを欠くことになった町田だが、レギュラーシーズン中にはなかなか活躍できなかったFP本田真琉虎洲(ほんだ・まるこす)が2得点をマーク。さらにFP室田祐希も追加点を挙げて、前半で3点のリードを奪った。

 2月4日にプレーオフ・ファイナル進出を決めてから、主力選手を休ませながらリーグ戦を戦い、そのうえプレーオフ・ファーストラウンドとセカンドラウンドの期間は試合のなかった大阪は、明らかに試合勘が欠けていた。それでもハーフタイムを境にチームは勢いを取り戻し、FPアルトゥール、FP田村友貴のゴールで1点差に迫る。しかし、同点に追いつくことはできずに試合終了。プレーオフ3連勝の町田が、優勝に逆王手をかけた。

 そして、3月5日に行なわれたプレーオフ・ファイナル第2戦は、予想以上の接戦となる。

 大阪は前半5分、全治9ヵ月の重傷を負った日本代表FP加藤未渚実(かとう・みなみ)に代わり、リーグ戦終盤から出場機会を得ていたFP仁井貴仁(にい・たかひと)の仕掛けからチャンスをつくり、FP永井義文が1タッチでゴールを決める。さらに、その2分後にはFPチアゴがアルトゥールからのパスを右サイドで受け、反転してシュートを決めてリードを広げた。だが、町田も前半終了間際に森岡が第2PK(※)を決めて1点差に詰め寄り、前半を終える。

※第2PK=前後半それぞれでチームが5回のファウルをすると、6回目以降は相手チームに壁なしのFKが与えられ、これを通称「第2PK」と呼ぶ。

 後半3分、町田はコーナーキックからFP篠崎隆樹の蹴ったボールがゴール前で守っていた仁井に当たり、オウンゴールとなって同点に追いつく。だが優勝するためには、町田はあと1点取らなければならない。一方、同点でも優勝の決まる大阪も勝ち越しゴールを目指し、目の離せない攻防が続いた。

 得点が決まらないまま残り時間が3分を切ると、町田はGKをFPの選手に代えて5人全員で攻めるパワープレーを仕掛ける。すばやくボールを回して守備のズレを誘おうとした町田だが、ボールコントロールにミスが生じて、チアゴにボールを奪われてしまう。チアゴは楽々と敵陣までボールを運び、無人のゴールに流し込んだ。このとき、残り試合時間は5秒――。2点が必要になった町田は、キックオフ後も攻め込まずにタイムアップ。大阪が初の栄冠を掴んだ。

 試合終了後、大阪のキャプテンを務めるFP佐藤亮は「名古屋オーシャンズが9連覇をしてきたFリーグですが、これからのシュライカー大阪が目指すのは、その先の10連覇です。ここからがスタートだと思います。選手、スタッフだけでなく、クラブとしても力をつけ、Fリーグを盛り上げていきたいと思います」と高らかに宣言した。

 今季の王座を逃した名古屋は、来シーズンの王座奪還に向けて、すでに大型補強へ動き出している。10年目の新王者誕生は、Fリーグの新時代到来の合図となるのだろうか。

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