(写真は聯合ニュースの報道より)

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 釜山の日本領事館前に設置された「慰安婦像」(韓国では「平和の少女像」と呼んでいる)の隣に「もう一つの少女像」が設置され、韓国社会では波紋を呼んでいる。

 まずは、釜山の日本領事館前の「慰安婦像」をめぐる問題を振り返ってみたい。

 2016年12月28日、釜山広域市の日本領事館前の歩道に、市民団体らが「慰安婦像」を設置したが、釜山広域市東区当局は、道路交通法違反として像を撤去した。しかし翌日の12月29日、東区に抗議の電話が殺到し、区の業務に大きく支障をきたしたほか、区のサーバーもダウン。12月30日には一転設置を認め、大晦日である31日に除幕式が行われた。

 日本はこれに抗議。菅官房長官は「このような措置は極めて残念である」とし、1月6日、日本政府の当面の措置として、在大韓民国日本国大使館・長嶺全権大使と釜山総領事館・森本領事を一時帰国させたほか、日韓通貨スワップ協定の取り決め協議の中断や、ハイレベル経済協議の延期等を決めた。

 長嶺全権大使は、現時点をもって、いまだ韓国に戻っていない。

◆「ゴミの像だけを撤去するのは問題がある」

 韓国JTBCの報道によれば、釜山の日本領事館前に新たに設置された「少女像」はゴミの「少女像」。2か月くらい前から、朴槿恵大統領の弾劾無効を訴えていた30代の男性が、今度は「少女像」の撤去を求めるビラを貼りながら、ゴミで模した「少女像」を設置した。汚れたベンチに壊れた扇風機を縛り付けた形が、「少女像」をイメージさせる。

 市民団体らは、当局に対し「即時のゴミの撤去」を求めたが、区の担当者は「ゴミの少女像」の設置は「平和の少女像」設置のせいであるとしながら、「『少女像』も無断で道路を占有しており、我々はそれを『黙認』している状態である。『少女像』に関する条例もないなかで、『ゴミの少女像』だけを撤去するのは問題がある」とコメントしている。

 韓国の外交部は、釜山の日本領事館前に設置された「慰安婦像」を移設するよう、釜山東区のほか、釜山広域市や議会に公文で求めているが市民団体からの反発は強い。
また1919年の「3.1独立運動記念日」(韓国の休日)には、京畿道・安養市のほか、韓国全土で「平和の少女像」が建立設置され、年内には100体ほどの「慰安婦像」が設置される見込みという。

◆新大統領の意向によっては、日韓合意が反故になる可能性も

 日本大使館の長嶺全権大使が大使館に復帰する条件は、あくまで「釜山領事館前の『慰安婦像』の撤去(移設)」ではあるが、仮に朴槿恵大統領の弾劾が決議され、2か月以内に公示される大統領選の結果によっては、慰安婦問題の日韓合意も反故される可能性もあり、問題の長期化の避けられない状況だ。

 30万人規模ともいわれる米韓合同軍事演習に対抗した北朝鮮のミサイル挑発や、金正男氏の暗殺事件、THAAD(高高度防衛ミサイル)の韓国配備による中国との外交経済摩擦など、米中・朝鮮半島を取り巻く情勢が刻一刻と緊張感を増しているなか、全権大使の不在やハイレベルの経済協議の中断が、日本外交に不利益を生じさせなければいいのだが……。

<文・安達 夕>