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宝石のように美しい色合いの花、ヒスイカズラが見ごろです。

新宿御苑の大温室は、カサついたこの季節にぜひ足を運びたい都会のオアシス。一歩足を踏み入れれば、そこは南国パラダイスです。甘い花々のかおりが鼻孔をくすぐり、熱帯の湿度がカメラのレンズを曇らせます。順路に沿って最初に左へ曲がったところで、ヒスイカズラの青い花が目にとびこんできます。



自然界の植物にはあまり見かけない、超ベジータみたいな…?青さ。

この青さのひみつは、筑波実験植物園の研究者、岩科司さんによれば、マルビンという赤紫のアントシアニン色素と、サポナリンという無色のフラボノイド成分。そのふたつが共存することによってコピグメント効果という現象が起こり、紫色になるそうです(ヒスイカズラのがくの部分などがそう)。さらに、ヒスイカズラの表皮細胞はpH7.9のアルカリ性なため、コピグメント効果で紫色になった花弁が翡翠色に変わるのだとか。

ヒスイカズラはフィリピン諸島のごく限られた熱帯雨林にしか自生しません。岩科さんによると、熱帯雨林の減少とともに絶滅が危惧されているそうです。新宿御苑のヒスイカズラは、大温室が平成24年にリニューアルオープンして以来はじめて2016年2月に咲き、今年は2回目の開花となるそうです。3月いっぱいは咲きそうですので、ご覧になりたい方はぜひお早めに。

ところで、ヒスイカズラの花はどうしてこんな変わった色をしているのでしょうか。花のかたちや色は、受粉してくれる虫や動物を誘い出すためにうまく工夫されているのですが、変わった色の花で変わったお客さんを誘い出しているのでしょうか?

なんと、ヒスイカズラの青い花はコウモリに好まれるんだそうです。花生態学の研究者、田中肇さんは、著書『花に秘められたなぞを解くために』でこのように解説しています。

コウモリ媒花をつける植物として知られる…(中略)植物の花は幹の途中に群がっていたり、、長くたれ下がった花茎の先につり下がった球形の集団をつくっていたりする。これは、オオコウモリの大きなつばさが枝や葉にふれ、飛行の妨げになることがないようにという、コウモリ媒花としての特徴の一つでもある。しかも花被は厚めで花は大きく、力の強いコウモリに乱暴に扱われても破壊されないようにじょうぶにつくられている。

新宿御苑の大温室に落ちていたヒスイカズラの花びらは、たしかに肉厚でした。残念ながら、野生のヒスイカズラの花をコウモリが受粉しているところはまだ目撃されていないそうですが、植物のしたたかさというか、かしこさには改めて驚かされます。



all images: 山田ちとら
source: 新宿御苑, 筑波実験植物園, Amazon

(山田ちとら)