何が驚いたといって、ピースの又吉が完全に純文学作家の顔になっていることだった。背が低くてデカ面で長髪で、如何にお笑い系とはいえ、さえない風体のお兄ちゃんだと思っていたが、すっかり思慮深い物書きの顔になっていた。住宅街の家賃4万円、風呂ナシアパートの仕事部屋に籠って第2作を書く又吉に密着した半年間。
NHKも商売人だなあ。200万部をはるかに超えたベストセラー作家の芥川賞受賞記念第2作の創作の苦しみに密着した映像とあれば、文学好きばかりでなく、お笑いバラエティやテレ東のスポーツ番組のお客までも見てしまうから、Nスぺとしては高視聴率が見込める。しかも、物書きにとっては恐ろしい天敵の文芸誌編集長まで登場させた。本来は黒子たるべき編集者がカメラの前で褒めている。
「新潮」編集長の矢野優はまだ若そうな人だ。1度は掲載にGOを出さなかったが、さらに手を入れて300枚を脱稿した又吉の2作目「劇場」は掲載が決まる。このNスぺをみたお客は買いに走るだろう。第1作が難しいと言われたので、分かりやすく書こうとしている又吉の発言を何度も言わせている。こりゃあ、新潮社の販促の大いなる片棒担ぎじゃないか? だが全く不快感はない。何故なら、又吉の、テレビやエッセイ書きの間の時間に、1人ぽっちで産みの苦しみと闘っている彼の姿勢が実に爽やかで、真摯さがよく伝わってきたからである。ナレーション(ミムラ)も静謐でよかった。(放送2017年2月26日21時〜)

(黄蘭)