ハスラーやスペーシアなど、スズキから新しい人気車種が次々に登場するなか、新しいワゴンRは変化を求められたといいます。では、その変化の内容とは何か? 担当デザイナーにインタビューを行ないました。前半はコンセプトからフロントを中心に話を聞きます。

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── まず、今回6代目を開発するにあたって、ユーザーや営業サイドなどからの要望はあったのですか?

「はい。実は先々代のデザインが好評で、先代はそれを踏襲したものでした。なので、今回はそろそろ変化が欲しいとの声が多かった。もちろん、ワゴンRらしさはキッチリ守った上で、という声ですね」

── 新型の造形上のテーマは何でしょう?

「バーサタイル=万能性です。前2世代はかなり乗用車的な表現で「ワゴン」のイメージが少し薄かったと感じます。そこで、流行のエモーショナル方向とは違う、機能としっかりリンクするような表現を考えました」

── ではフロントから具体的にお聞きします。今回は3つの顔を設けましたが、標準車のモチーフを「四角」としたのはなぜですか?

「有機的なカタチは表情が強く好き嫌いが出やすいし、丸も意外に印象が強いんですね。そこで四角を用い、使う人を限定しない万能感を出したいと考えました。ただし、四角でもあまりカッチリだと窮屈なので、角に適度なRを付けています」

── ハイブリッドのFZ系は、標準車に対し「上級」との位置づけですが、カスタムっぽいイメージもありますね

「二段構えの構造は、小型車であるソリオ・バンデッドの上級イメージを持ってきました。それと、自分の中ではカスタムというより、かつてのRRのようなスッキリかつクールなイメージを狙ったんですね。実は今回、フロントの厚さが増したこともあり、そこでどういう造形が可能かを考えた結果でもあるんです」

── カスタム仕様は往々にして派手一辺倒な表現になりがちですが、スティングレーはどのように考えましたか?

「デザインで何を表現するかが定まっていないと、単に派手にとか、ただインパクトがあればいいとなって、1台のクルマとしてまとまりを欠いてしまうことがあります。今回はランプ、グリルをそれぞれ独立させてしっかり見せる、伝統的な構成を現代風にまとめました。闇雲にメッキやラインを使うのではなく、強い立体感を追求した造形です」

── 同じボディに3つの異なる顔を付けるのは非常に難易度が高い造形と思えますが?

「たしかに、ボディサイドにキャラクターが入っていると、フロントのデザインに大きな制限が出てしまいます。今回は、その点ボディがかなりシンプルなので、違和感なくマッチさせることができたと思います」

── では、サイド面です。今回、ボディの前半分をパーソナルスペース、後を実用スペースと、ふたつに分けて考えたのはなぜですか?

「好評だった前2世代は、前後のウインドグラフィックがひとかたまりで、広さ感を重視しました。ただ、実際の使われ方はパーソナルで、多人数用途はスペーシアに移っています。そこで、パーソナル感とワゴン感をそれぞれ表現しようと思いました」

── 前半分は、具体的にどこがパーソナルなイメージなのですか?

「今回はベルトラインを中央で折って、前側はラインを下げました。これによって運転席重視のイメージを作ると同時に、ドアミラーの前にガラススペースを作って、実際の視界も確保しているんですね」

── ありがとうございます。

先代、先々代で好評だった乗用車的なグラフィックやベルトラインを「折る」という手法はかなり大胆ですが、クルマの性格をワゴン的に大きく変化させるという明確な理由からだとします。その大胆なチャレンジがどう完結したのか、続きは後編で伺います。

[お話を伺った方]

スズキ株式会社 四輪商品・原価企画本部 四輪デザイン部
四輪デザイン企画課 専門職 金子唯雄
四輪インテリア課 渡邉盛弘

(インタビュー:すぎもとたかよし)

乗用車からワゴンボディへの回帰? 新型ワゴンRが求めた変化とは?(前編)(http://clicccar.com/2017/03/06/447297/)