島田開八段役の佐々木蔵之介。原作ファンが熱望したキャスティング。
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 佐々木蔵之介と伊藤英明がおやつをむさぼりながらにらみ合う、ともすれば珍妙にも見える光景が2016年4月24日、東宝スタジオで行われた『3月のライオン』の撮影で繰り広げられた。

 本作は将棋会館でも撮影が行われたが、360度カメラを回す試みなど、演出の自由度を広げる目的でセットも作られた。この日、将棋会館の特別対局室を再現したセットで撮影されたのは、獅子王戦トーナメントの決勝戦。佐々木演じる島田開八段と、伊藤ふんする後藤正宗九段の対局だ。スーツ姿で盤面に向かう二人が額に手を当てて考え込む姿や、頭をポリポリとかいて次の一手を探す様子など、モニターに映る映像は実際の将棋中継と錯覚するほどなじんだ画で目を見張る。

 そんな中、意外な“盤外戦”も展開された。スポーツ選手が水分補給をするように、将棋の対局では長時間にわたって脳を働かせることができるように糖分補給のおやつタイムがあり、将棋ファンの間では誰が何を食べるのか、注目の時間としておなじみになっている。

 撮影ではこのおやつタイムのシーンもあり、「においや音が出るものは相手に失礼なのでNG」というプロ棋士からのアドバイスも。伊藤はまんじゅう、佐々木は島田の故郷・山形を意識したゆべしや干し柿をプラスチックの密閉容器から取り出し、盤に目を走らせながらひたすらにむさぼってにらみ合うが、大の男が厳粛な雰囲気の中おやつを食べる姿はどこか面白い。さらに、撮影は様々な角度から行わなければならないため、二人は何度もおやつを食べなければならず、大友啓史監督からも「何個食べられるかが勝負ですね」と、叱咤激励の声が飛ぶ。まさかの“盤外戦”に、カットがかかった後伊藤からは思わず笑みがこぼれていた。

 そのおやつタイムの後には、胃の痛みに耐えながら必死に将棋を指し続ける島田の場面が撮影された。片手をそっと胃のあたりに添えたり、顔を覆ったかと思うと髪が乱れるほどに頭を抱えたりする様子からは、こちらの胃も痛み出すほどの苦悶が見て取れる。しかし島田は、ボロボロになりながらも瞳にますますの気迫を宿し、執念で盤に向かう。主人公・桐山零役の神木隆之介と並んでファンが熱望した佐々木だが、漫画の島田と寸分違わないその姿は、原作ファンも大満足に違いない。

 同日は朝から日が暮れるまでほぼ対局シーンが続くというスケジュールだったが、手元しか映らないカットでも俳優陣は差し替えなしで自ら将棋を指し、最高の指し手をおさえようと何度もテイクを重ね、手を放す瞬間にまでこだわる。そこに、一手一手誤りがないかチェックが入り、キャスト陣も撮影の合間に積極的に指導を受けるなど、原作の監修・コラムを務める先崎学九段や村中秀史六段、藤森哲也四段、田中誠氏ら将棋監修チームと連携して撮影が進められていた。

 羽海野チカのベストセラーコミックを実写化する本作は、天賦の才を持つプロ将棋棋士の零が、同じ下町に住む川本家の三姉妹や周囲の人々との触れ合い、数々の対局を通して、心の傷と向き合いながら成長していくさまを描く人間ドラマ。(編集部・吉田唯)

映画『3月のライオン【前編】』は3月18日、『3月のライオン【後編】』は4月22日より全国公開