渡邉を一列上げてFWを任せるのが、ネルシーニョ監督の判断だった。(C)J.LEAGUE PHOTOS

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 神戸が5年ぶりに開幕2連勝を飾り、暫定3位(3月4日時点)になった。1節のアウェー清水戦でレアンドロが負傷し、エース不在を余儀なくされながらも、2節の新潟戦を2-1で勝利した。今年の神戸は強い。そう印象づける2試合だった。
 
 開幕ダッシュ成功の最大の要因は選手層の厚さだろう。新潟戦の後の記者会見でネルシーニョ監督は次のように話している。
 
「(シーズン開幕前の)新加入発表記者会見でもお話ししたように、今年の神戸は先発メンバーだけではなく、途中から出る選手たちの実績と質が高く、それぞれが高いレベルでの特長を持っている。そして良い結果を出してくれている。個々が神戸に順応するために日々努力しているからだ。その姿を私は見ているし、そういった姿勢が結果につながっている」
 
 名将の下、数々のタイトルを手にしてきた田中順也も優勝の条件として「選手層の厚さ」を挙げている。「誰が入っても同じクオリティを出せること。優勝するチームにはそれがあると思う」。
 
 開幕戦と今節の新潟戦のスタメンを比較すると、GKからボランチまでは同じ。前の4枚もメンバー的にはレアンドロと松下佳貴が変わっただけ。だが、前4枚の配置が微妙に変更されている。
 
 大森晃太郎が右サイドハーフから左サイドハーフへ。渡邉千真がひとつ前に上がり、田中順と2トップを組んだ。
 
 そして清水戦では左SBとして途中出場した松下が、新潟戦では対角線上にあたる右サイドハーフへ大移動。選手に複数ポジションを求めるネルシーニョらしいシャッフルだが、実はこの方針が選手層の厚さに一役買っている。
 
 さらに、このポリバレント化が神戸にさまざまなオプションをもたらしているから面白い。「それぞれが高いレベルでの特長を持っている」と指揮官が語った部分である。
 
 新潟戦の大森と松下の配置を例に少し掘り下げたい。
 
 そもそもの議案はレアンドロの穴を誰に埋めさせるのか、である。選択肢として有力だったのは、清水戦のように大槻周平を入れるか、あるいは渡邉をひとつ前に上げるか。その結果、新潟戦では渡邉というカードを選んだ。
 これにより渡邉のいた左サイドハーフが空く。普通ならレフティの松下かウエスクレイを置きそうだが、右利きの大森を入れた。G大阪時代に経験しているポジションだからここはなんら問題ない。
 
 そして大森のいた右サイドハーフに松下を配した。つまり、カットインからゴールを狙いやすい配置。ここには“ゴールを狙え”という指揮官のメッセージが込められていると思われる。
 
 同時に、右SBには右利きの高橋峻希、左SBには左利きの橋本和を置き、大森と松下が中へ切れ込むことで空く縦のスペースをこのふたりのSBが攻める。このシステムによって、レアンドロが抜けて懸念される得点力不足をカバーするという狙いが明確になったと言える。
 
 とはいえ、開幕2試合の3ゴールはいずれもセットプレーから。持ち味の高さを生かした格好になるが、積極的にゴールを狙う姿勢があればこそ、CKやFKを生んでいる。新潟戦だけを見れば、結果的には大森と松下の起用法が功を奏したと言える。
 
 開幕2連勝の要因は「選手層の厚さ」と言った。そこには2年かけて進めてきたポリバレント化も含まれる。そして名将が相手を見て組み合わせを変更し、その時々でチームケミストリーを生じさせていく。
 
 まだ2試合だが、今年の神戸はより多彩な化学反応が起こりうることを証明した。この開幕2連勝には、単に勝点6だけではない興味深い意味が含まれている。
 
取材・文:白井邦彦(フリーライター)