プロ2戦目は55分の出場に留まった。ライバルたちもプロデビューを飾っているだけに安心はできない。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 3月4日に行なわれたJ2・2節の千葉対山形。高卒ルーキーの高橋壱晟はフル出場を果たした開幕戦に続き、山形戦もスタートからピッチに立った。しかし、この日は55分に途中交代。球際で競り負ける場面が目立ち、「もっと良いサッカーをしなければならない」と、フアン・エスナイデル監督を納得させられるプレーを見せられなかった。
 

 ただ、攻撃では前節同様に存在感を発揮。前半からワンツーで好機を演出し、局面を一発で変えるサイドチェンジも効果的に繰り出した。「高橋はスーパー高校生だと思う。めちゃめちゃ上手いし、あそこまで出来るのは本当に凄い」と町田也真人。攻めの部分では“らしさ”を披露し、十分過ぎるほどのプレーだったのは確かだ。
 
 ただし、開幕後の現在こそレギュラーを務める高橋だが、最初から順風満帆に事が進んだ訳ではない。青森山田高を高校サッカー選手権優勝に導いた結果、千葉の練習に合流できたのは1月15日。この時点ですでにクラブは始動してから5日が経っており、高橋自身は連戦による疲労でコンディションが万全ではない。その中でプロのプレースピードに慣れる作業に取り組む必要があり、始動当初の位置付けはインサイドハーフのバックアッパーだった。
 
 それでも、沖縄キャンプで評価を一変させたのはさすがの一語に尽きる。1月22日に行なわれたニューイヤーカップ・琉球戦、後半頭から出場機会を与えられると攻撃面で存在感を発揮。プロのフィジカルコンタクトの強さを前に「体力が持たなかった」と疲労困憊の表情を見せていたが、指揮官を納得させて一躍開幕スタメン候補に名乗りを挙げた。
 
 しかし、チームでの立ち位置を自らの力で変えた高橋にアクシデントが襲う。1月下旬に筋肉系のトラブルで戦線離脱を余儀なくされたのだ。
「怪我をしないためにストレッチをもっとやっておけば良かった」
 
 普段であれば見落とすことはなかったが、開幕スタメンを視界に捉えた結果、気持ちが先走った。そのため、身体の異変に気付けなかった。ただ、幸いだったのは、クラブが高橋の精神状態を察知していたこと。
 
「本当はもうプレー出来るんですけど、合流させてもらえない」と本人は2月9日の時点で語っていたが、怪我が完全に癒えるまで別メニュー調整を命じ、2月18日の相模原戦まで実戦復帰を遅らせた。その結果、怪我は再発せず、オープニングゲームに万全の状態で挑むことに成功したのである。
 様々な困難を乗り越えてレギュラーポジションを勝ち取った高橋。千葉の高卒ルーキーとしては、00年の阿部勇樹(浦和)以来の開幕スタメンだ。
 
 ここから5月に開催されるU-20ワールドカップを目指すのであれば、さらなる結果が求められるのは明白である。当然、その舞台を視野に入れるライバルたちが多数いるわけで、とりわけ今年のJリーグは高卒ルーキーの台頭が開幕から目立つ。
 
 市立船橋高出身の原輝綺(新潟)と杉岡大暉(湘南)は2戦連続でフル出場を果たし、杉岡は2節の群馬戦で早くも初ゴールを記録した。京都の岩崎悠人(京都橘高出身)も2試合続けて途中からピッチに立ち、開幕戦では貴重な同点弾をアシストしている。しかも、彼らは先日発表されたU-20日本代表の面々。つまり、開幕から2試合連続でピッチに立っているだけでは存在感を示したことにはならない。彼らを凌駕するには、アタッカーである以上ゴールやアシストという結果が必要なのである。
 
 この試合もゴール前に何度か良い形で入り込んだが、パスが出てこなかった。高橋はその理由を「(先輩たちに)遠慮はしていない。でも、パスの要求の仕方が良くなかった」と振り返る。しかし、高橋には頼もしい先輩たちが付いている。
 
「もっとできると思う。そうできるように持っていかせるのが、僕の役目。それを担わないといけない。自分でゴールを奪うのが高橋の特長だと思うので、そこを出してあげたい」
 コンビを組む町田はこう話し、若武者の活躍にはサポートが必要であるとし、特徴を引き出す環境を整えることを約束する。
 
 謙虚に課題と向き合ってきた男は、先輩たちの力も借りながら次節こそ結果を残す。
 
取材・文:松尾祐希(サッカーライター)