2節の群馬戦でプロ初ゴールをマークした湘南のルーキー・杉岡。市立船橋高時代からその能力を高く買われた選手だ。(C) J.LEAGUE PHOTOS

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 2月25日・26日のJリーグ開幕戦では複数の高卒ルーキーがスタメン出場の機会を手にしたが、2節目にはプロ初得点をマークする選手が現われた。
 
 ホーム開幕戦で群馬を相手に3-1で勝利を収めた湘南に先制点をもたらしたのは、市立船橋高からやってきた杉岡大暉だ。高校サッカー界では注目度ナンバーワンの「DF」である杉岡だが、そのゴールはセットプレーではなく、流れの中から生まれたものだった。
 
 10分、左サイドの高いエリアからボックス内にくさびのパスを入れる。一度は相手DFに弾かれたものの、これを自ら拾ってゴール前に侵入してなめらかなドリブルで3人を交わし、角度のないところから左足を振り抜いてサイドネットに突き刺した。
「あのエリアでこぼれてきたので、スピードに乗っていたのもあって仕掛けようと。その中でよく点を取れたと思います」
 
 本人も狙い通りの一発だったわけだが、本人曰く練習の時点で”予感”があったようだ。
 
「けっこうゴール前で練習から入り込める場面があったし、チャンスがあるというのは練習の時から感じていたので、いい形で取れて良かったです。フォーメーション的にもどんどん行って良いポジション。ドリブルは得意な部分だし、パワーを持っていたらどんどん仕掛けていこうという意識があったので、それが出せた」
 
 3バックの左右が積極的に前進して敵陣に入っていくのが湘南スタイルであり、こういう場面が想定できるのは分かる。ただ、実際の試合で体現するのは簡単ではない。さすが、高校ナンバーワンDFと言うべきか。湘南にとって彼の獲得は、大当たりと言って良いだろう。
 
 そんな彼の獲得が決まった時の、湘南・小原スカウトの言葉が忘れられない。
「うちにもついに、市船から選手が来てくれるようになったよ」
 
 選手権とプレミアリーグは逃したものの、インターハイを制し2016年度の注目校であった市立船橋という名門で主将を務めた選手がやってきたのだからその喜びも納得だ。しかも、FC東京、名古屋、千葉という3チームとの争奪戦を制したのである。
 
 市立船橋と似た3バックの形を持つことと、出場機会を得られる可能性が高いということ。獲得に成功した要因として、この2つが大きいと小原スカウトは語った。そして、期待をかけられた中で杉岡は開幕スタメンを奪取し、2試合目にしてゴールを記録したのである。
 
 対人守備の強さはもちろん、敵陣に入り込んだ時に見せる攻撃センスの高さは高校時代から折り紙つきであったが、こうも早く結果を示されると、やはりその将来には大きな期待が膨らんでくる。
 杉岡は、3月7日から行なわれるU-20日本代表の候補合宿にも招集された。そこでは「キックや守備の時の対人」という自身の強みを見せたいと杉岡は言う。アピールの場に移す直前の試合で目に見える結果を残せたことは、大きな弾みになる。
 
「完全に老けてますね。顔もプレーも(笑)。しっかり安心して見ていられますし、あれだけどっしりしているので」と、チームメイトの石川俊輝は冗談交じりにこう言うが、杉岡に対して持つ大きな信頼感に疑いはない。
 
 プレーと外見から発せられるオーラはおよそルーキーのそれとは程遠く、すでに、“完成された”感がある。だが、これで留まっては困るし、5月に行なわれるU-20ワールドカップには重要な戦力として日の丸を背負ってほしいものだ。
 
 ただ、クラブとしては彼が抜けるとなると相応の痛手となるかもしれない。まだ2試合を消化したにすぎないが、湘南にとって背番号29の存在は、すでに決して小さくはない価値を示しているのだ。
 
取材・文:竹中玲央奈(フリーライター)