実話に基づく名作青春映画『クー嶺街少年殺人事件』
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 25年ぶりに4Kレストア・デジタルリマスター版として再上映される名作『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』の撮影現場に、若かりしころ、偶然訪れていた行定勲監督が、貴重な現場でのエピソードや独特な空気感、さらにエドワード・ヤン監督との思い出について振り返った。

 1990年当時、助監督に就いていた林海象監督に頼まれ、撮影で使う音響(DAT)機材を台湾まで届けることになった行定監督。何も知らないまま、彼が訪れたのはエドワード・ヤン監督の事務所だった。「その後、プロデューサーのユー・ウェイエンさんに『見ていく?』と言われて現場に行ったら、なぜか録音マイクを持たされたんですよ。録音技師がドゥー・ドゥージーさんで、後に『真夜中の五分前』(2014)で仕事したときにわかったんですが、彼は僕を録音スタッフと間違えていたようなんです(笑)」と爆笑エピソードが明らかに。

 その後、クライマックスのセット撮影に立ち会った彼は、「日本の現場と違い、リハーサルから撮影まで、こんなに時間をかけて1シーンを撮るんだと驚きました。昼から夜まで……。あと、チャン・チェンもいたと思うんですが、キャストの子供たちが機材やカメラのレールを運んだり、ケータリングのお皿を並べたり、手伝っていたんです。まるで演劇(の現場)のように、役者もスタッフも関係なく、皆が一丸となって、映画というプロジェクトに関わっている感じがしました」と、現場の様子を振り返る。

 そして、「とても背が高く、ジーンズ姿が似合うスタイリッシュな人」といった第一印象を持った、故エドワード・ヤン監督について。「現場では子供たちに容赦なく、スパルタで演出していたのを覚えています。その後も、林監督を介して、何度か台湾でお会いする機会がありましたが、一緒にごはんを食べて盛り上がるタイプの方ではありませんでした」と伝説の監督は孤高のイメージが強かったようだ。

 それでも、行定監督にとってヤン監督は常に憧れの存在であり、監督を続けるうえで支えになっているという。「僕の『GO』(2001)がモロッコのマラケッシュ国際映画祭でコンペに入ったときに、審査員にヤン監督がいらっしゃったんです。僕の映画を観てくださったことも誇りだったんですが、最優秀作品賞と最優秀男優賞(窪塚洋介)をとったときに『おめでとう!』と言ってくださって」とうれしそうに語る行定監督。「ヤン監督の現場に立ち会えたことは、僕の財産」とも語る一方、「できれば、タイムマシンに乗って、もう一度現場を見返したい」そうだ。(取材・文:くれい響)

映画『クー嶺街(クーリンチェ)少年殺人事件』は3月11日より角川シネマ有楽町ほか全国順次公開