『セーラームーン世代の社会論』などの著書がある編集者でライターの稲⽥豊史さんによる最新刊『ドラがたり のび太系男⼦と藤⼦・F・不⼆雄の時代』(PLANETS)が3月4日、発売されました。

のび太系男子を中心に『ドラえもん』を紐解いてみると…

『ドラがたり』は、評論家の宇野常寛さんが主宰する「PLANETS」の⼈気メルマガ連載に大幅な加筆修正を加えて書籍化。国民的マンガとして君臨し、アラフォーの団塊ジュニアから30代前半のポスト団塊ジュニアくらいまでの世代の男性に多大な影響を与えた『ドラえもん』について探っています。

『ドラえもん』に幼い頃から親しみ、大人になった今ものび太というキャラクターの影響を受けている現在30〜40代の男性を「のび太系男子」と定義し、のび太系男子の闇からしずかとジャイ子、ドラえもんの道具、大長編、作品の社会批評的側面や社会ネタ、作者である藤子・F・不二雄の人生観に至るまでを考察しています。

本サイトで「ブスの社会学」を連載中の筆者がしずかとジャイ子について論じた「ふたりのファム・ファタール」(第5章・6章)では、「成功した未来」の象徴としてのしずかと「失敗した未来」の象徴としてのジャイ子がそれぞれの人生をどうサバイブしていったのかが時代背景や社会現象とともに描かれます。

ジャイ子のリアリティの正体は?

1990年代に思春期を迎え、2000年代を生きてきたアラサー世代にとって、よりリアルに力強く感じるのは昭和のマドンナ的なしずかよりも「外見よりも才能で勝負!」というジャイ子なのではないでしょうか。「私はどちらかというとしずかなんだけど…」という女子(うらやましい!)もジャイ子系女子の存在を無視できなかったのが90年代後半、2000年代だったのかもしれません。

“男ウケ”という言葉に代表される他者目線よりも、自分のこだわりを大切にし、自分がやりたいことを思いっきりやるような自分目線で生きるジャイ子を自分自身に重ねながら『ドラえもん』を読み返したいと思った一冊でした。

『ドラがたり のび太系男⼦と藤⼦・F・不⼆雄の時代』は304ページ、1800円(税抜き)。

(ウートピ編集部・堀池沙知子)

ウートピ編集部