生々しい歌とパフォーマンスで「アタラズモトオカラズ」の世界観を見せつけた石崎ひゅーい(撮影=kamiiisaka hajime)

 シンガーソングライターの石崎ひゅーいが2月16日に、東京・恵比寿LIQUIDROOMでワンマンツアー『石崎ひゅーいTOUR2017「アタラズモトオカラズ」』のファイナル公演をおこなった。昨年12月7日にリリースした通算3枚目となるフルアルバム『アタラズモトオカラズ』を引っ提げて、大阪、名古屋、埼玉、東京の4公演をおこなうというもの。ニューアルバムから「溺れかけた魚」と「謝肉祭」、そして、定番の「夜間飛行」など、全19曲を、石崎ひゅーいの持つ内面から放たれるエモーショナルな歌声とパフォーマンスで、観客を魅了した。12月に東名阪で『石崎ひゅーいTOUR 2017「鬼退治」』の開催も発表。ツアーファイナルは12月23日に東京Zepp DiverCityで迎える。

石崎ひゅーいのリアルが描かれたステージ

オープニング(撮影=kamiiisaka hajime)

 開演定刻になると、BGMが徐々にクレッシェンドしていき会場は暗転。ステージ前方にかけられた紗幕(しゃまく)に、ひゅーいの声とともに<誰か僕を月に連れてってくれ>と、アルバムのオープニングを飾る「溺れかけた魚」の詞が投影された。既にこの時点で彼のワールドに引き込まれていく。語りのパートが終了すると、ひゅーいのシルエットが紗幕の向こうに映し出された。アコースティックギターを奏でながら歌うひゅーい。ステージのサイドからは紙吹雪が噴射され、宙を舞っていた。

 ひゅーいの内面から溢れ出る力強いメッセージがLIQUIDROOMに響き渡る。続いて、浅田信一作曲の「沈黙」を披露。完全に自分の曲のように、歌い上げていく。そして、「常識」へ。ギターを下ろし、両手でしっかりとスタンドにセットされたマイクを握りしめ、言葉を紡ぐ。迫真の歌声は観客の耳と目を奪うようだった。

 「ピノとアメリ」では、マイクに感情をぶつけるように歌い、さらに感情の深いところにまで誘い込む。「母子手帳」ではアグレッシブなビートを浴びるかのように、体でリズムを刻んでいく。サビではステージ後方に設置されたライティングが、キラキラと星が瞬くように楽曲を盛り立てていく。

 ひゅーいは「自由に最後まで楽しんでいって下さい」と観客に語りかけ、そのまま「傷心」へ。シンガーソングライター大友裕子の名曲。この世界観はひゅーいの為に書かれたのではないだろうかと思えるほど、魂の叫びのような歌声は現実を忘れさせてくれるようだ。再びアコギを手に取り、「さよなら、東京メリーゴーランド」へ。3連のリズムがメリーゴーランドの廻る様子を連想させてくれる。力強くもあり、儚さもある不思議なひゅーいの歌に酔いしれる観客の姿。

 軽快なリズムが心地良い「牧場で僕は迷子になって」を披露。<愛してるってなんだっけ>と問題定義を投げかけながら展開。続いて、ファンキーなギターと4つ打ちのリズムが体を揺らす「トラガリ」へ。言葉を畳み掛けるように発信していくひゅーい。そして、「東京のみんなの歌です」と投げかけ、定番曲の「夜間飛行」を届けた。フロアからは一体感のあるクラップで満たされた。ひゅーいもハンドマイクで熱を注ぎ込むように歌い上げていく。サビでは観客もシンガロングでその歌声に応えていく。

 ブルースハープを切なく響かせるひゅーい。そこからパワフルなビートと共鳴するかのように、歌声も存在感を増していった「ピーナッツバター」。そして、自分がなぜ歌うのかということを歌ったという「謝肉祭」。真理をついた生々しい言葉たちがひゅーいから飛び出してくる。これから先も歌い続けていくであろうアンセムを、浴びるように聴きいる観客。このライブの全てがここに集約されていたのではないかと思えるほどの空間だった。

8分を超えるポエトリー・リーディング

石崎ひゅーい(撮影=kamiiisaka hajime)

 ここでMCを挟む。ひゅーいが過去に組んでいたバンド、アストロコーストのメンバーの話を語った。そのメンバーが本日LIQUIDROOMに来ていることを告げ、バンド時代の楽曲「サヨナラワンダー」を披露。色気のある歌声が会場を包み込んでいく。手応えを感じたのか、演奏が終了するとガッツポーズをするひゅーい。

 <一人じゃないってわかったよ♪>この言葉にこの曲の意味が集約されていた「敗者復活戦」。<チャンスは必ずあるから>と希望を掲げ、「東京の皆さん、まだ足腰は大丈夫ですか?」と観客に問い披露したのは、壮大なスケール感を持つ「第三惑星交響曲」。眩い光が点滅するステージ。フロアを見渡しながら歌うひゅーいの笑顔が印象的だった。

 そして、「僕だけの楽園」では観客による<YEAH!>の盛大なコール&レスポンスにグッドサインを送る。さらに小型のカメラを持ち、フロアを撮影していき「これ何に使われるんだろうな?」と疑問を投げかけるが、そうしている間も楽曲は進んでいく。エンディングでひゅーいはお立ち台から大ジャンプを見せた。

 ここで、トオミヨウ(Key)を残しバンドメンバーがステージを去っていく。ステージ上にはひゅーいとトオミヨウの2人のみ。叙情的なピアノの旋律に、ひゅーいのギターが寄り添うように奏でられていく。アルバムのタイトルでもある「アタラズモトオカラズ」は、8分を超えるポエトリー・リーディング。劇的なナンバーは聴くものの感情を揺さぶり、圧倒的な言葉たちの前に観客も静かに立ち尽くす。

 その余韻が残るなか、ラストは「お前は恋をしたことがあるか」を弾き語りスタイルで届けた。「アタラズモトオカラズ」で高ぶった心を落ち着かせるように優しく歌い上げていく。声とギターという最小限の演奏は、ダイレクトに体に染み渡ってくるようだった。最後にひゅーいは訪れた観客に向け、深く長いお辞儀で感謝を伝えステージを去った。

ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime) 石崎ひゅーい(撮影=kamiiisaka hajime) ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime) ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime) オープニング(撮影=kamiiisaka hajime)
ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime) ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime) ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime) ライブのもよう(撮影=kamiiisaka hajime)

(取材=村上順一)

セットリスト

『石崎ひゅーいTOUR2017「アタラズモトオカラズ」』
2月16日 東京・恵比寿LIQUIDROOM

01.溺れかけた魚
02.沈黙
03.常識
04.ピノとアメリ
05.母子手帳
06.オタマジャクシ
07.傷心
08.さよなら、東京メリーゴーランド
09.牧場で僕は迷子になって
10.トラガリ
11.夜間飛行
12.ピーナッツバター
13.謝肉祭
14.サヨナラワンダー
15.敗者復活戦
16.第三惑星交響曲
17.僕だけの楽園
18.アタラズモトオカラズ
19.お前は恋をしたことがあるか