ロン・クレメンツ&ジョン・マスカー監督

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 映画『アラジン』『ヘラクレス』を手掛けたジョン・マスカー&ロン・クレメンツ監督の最新作『モアナと伝説の海』が公開を迎える。ディズニープリンセス作品の魅力といえば、美しい映像と音楽が挙げられるが、過去の作品では「ヒロインが歌わない」という選択肢も検討されていたんだとか……。そんな秘話をはじめ、今回初めて3DCGで作品に挑んだことへの率直な感想などを両監督が語った。

 本作でヒロインを務めるモアナは、伝説が息づく南の島に生まれ、海を愛し海に選ばれた少女。「大海原に飛び出したい!」という夢を持ち、闊達(かったつ)に自身の道を切り開いていく姿が、美しい歌と映像で表現されるディズニープリンセスだ。ファンの多くはストーリーと共にプリンセスの歌に酔いしれ、そのファンタジックなシチュエーションに魅了される。

 こうした伝統的な「ディズニープリンセス&歌」というのは企画上、絶対条件なのだろうか? クレメンツ監督は「必ずしも絶対というわけでもないんです」と語ると、「『アラジン』のヒロインであるジャスミンは、もともと歌う予定ではなかったんです。実際、英語版でジャスミンを担当したリンダ・ラーキンという女優は歌わない方でした。企画としても、それでいいだろうと進んでいたのですが、結局はストーリー変更となり『A Whole New World』という曲をレア・サロンガという歌手に歌ってもらうことになったんです。とは言うものの、この映画の主役はアラジンで、アラジン自体は歌う設定だったのですが……」と秘話を明かした。

 また『モアナ』は、手描き時代からディズニーアニメーションを作ってきた両監督にとって、初めてCGアニメーションで完成させた作品。だがモアナと共に旅に出る、風と海をつかさどる半神半人のマウイのタトゥーなどには手描きの要素が残されている。マスカー監督は「両方の経験をしたことでいろいろなことが見えてきました」と切り出すと、「まず手描きのメリットはいろいろなアイデアに対して紙と鉛筆さえあれば、すぐに描いてアニメーションが作れます。CGでは設定、設計からリグ(3Dモデルを操作できるように骨組みなどを設定すること)を経て空間を用意してからではないと動かせない。その意味で試行錯誤する段階ではCGは大変ですね」と説明する。

 一方で「お膳立てができてしまえば、CGは何通りの方法が試せるということでは便利です。手描きの場合、一度進んでしまってから方向性や演技を変えたりすると、一から描き直さなければならない」とCGのメリットも話す監督。

 では実際、本作でCGを使用したことはどういった功罪があったのだろうか。クレメンツ監督は「『アラジン』では、ジーニーが姿を自在に変えることができました。あのアニメーションは、エリック・ゴールドバーグが担当したのですが、手描きならではの自由さで、いろいろなアイデアを反映することができました。一方、本作のマウイも変身して姿形を変えることができるのですが、CGでは変貌するもののモデルを作り、設定を用意し、リギングしていく作業をすべてやらなくてはならないので、非常に作業量が多くなり、かなりの制約を強いられたのです」と撮影を振り返る。

 しかし続けて、クレメンツ監督は「本作で大切な役割を果たす海。生きている海を描く際、水から光が屈折しているような表現をするには、手描きよりもCGの方が適している」とコメント。「水中での髪の毛の質感や、照明、カメラの動かし方など、全体的に海の豊かさを表現できたのはCGだからこそだと思っています」とCGならではの表現により、本作が魅力的な作品になったことに胸を張っていた。(取材・文・写真:磯部正和)

映画『モアナと伝説の海』は3月10日より全国公開