photo by はむぱん

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 減損損失は7000億円に上り、3月末に債務超過に陥ることは確実視されている東芝問題が紛糾している。JALに東電、シャープそして三菱自動車、かつての名だたる日本の名門企業の凋落は今や珍しくなくなってきた。いったい今、日本企業のコーポレートガバナンス(企業統治)の現場に何が起こっているのか?

 現役の東京大学経済学部生にして決算書や各種統計データを読み込み、企業の意外な実態を暴き出し、そのノウハウをまとめた新刊『東大式 スゴい[決算書の読み方]』を3月12日に上梓する大熊将八氏。そんな彼が「コーポレートガバナンス・コード」の提案者であり、日本企業の役員研修を手がける「公益社団法人会社役員育成機構(BDTI)」代表理事を務めるニコラス・ベネシュ氏を直撃。

 第1弾では東芝をモデルケースに、コーポレート・ガバナンスを毀損し、日本企業を蝕むものの正体に迫った。今回は日本のコーポレート・ガバナンスの歴史について、当事者として携わったベネシュ氏と振り返りる--。

◆過去最多だった不適切会計

大熊:それにしても、昨年ごろからいろいろな企業で会社の所有権を巡る「お家騒動」が起きたり、不祥事が多発しているように思えます。実際、東京商工リサーチによれば、’16年は過去最多のペースで不適切会計が明らかになっています。どうして企業不正がこんなに増えているのでしょうか?

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=131979

ベネシュ:私は不祥事が急に増えているわけではなく、日本社会が「コーポレート・ガバナンス」の重要性にようやく気づいたのだと考えています。

大熊:どういうことですか?

ベネシュ:企業が不正を行った時、きちんと告発するのが大事だという意識を社員が持ち始め、そしてそれをきちんと公表し報道することが大事だという認識が生まれたのです。東芝の不正も、内部からの告発によって事件が明るみに出ました。

大熊:なるほど。例えば近頃は「不倫」関連のスクープもよく報道されますが、別に最近になってみんなが急に不倫し始めたわけではなく、告発が増えたり、メディアが思い切って報道するムードが高まったからこそ、表沙汰になることが多くなったわけですよね。それに似ているかもしれません。

 私の新著『東大式 スゴい[決算書の読み方]』でも、お家騒動や不祥事を起こした企業の見分け方を解説していますが、確かにコーポレート・ガバナンスという言葉も最近、書店や新聞・雑誌などで見ることが多くなってきました。

◆ホリエモンと「コーポレート・ガバナンス」

ベネシュ:ただ、コーポレート・ガバナンスはまだ内部統制をしっかりして、不正を防いだり、きちんと告発できるようにしようという「コンプライアンス」の文脈で語られがちです。コーポレート・ガバナンスはコンプライアンスだけではありません。「とにかく恥ずかしいことを避ける」ために存在するものだけではなく、企業の「稼ぐ力」を増大させ、中長期的な成長性・収益性を高める、価値最大化のための企業統治の仕組み。それこそがコーポレート・ガバナンスであり、日本企業に求められているものです。

大熊:なるほど。それが近年、急に盛り上がってきたのはなぜでしょうか。

ベネシュ:’15年6月に「コーポレートガバナンス・コード」が制定され、安倍政権の成長戦略の柱となりました。それまでには10年以上にわたる長い道のりがあったのです。この図を見てください。

⇒【資料】はコチラ https://hbol.jp/?attachment_id=131977

 ’05〜’06年にかけて、コーポレート・ガバナンスという言葉には勢いがあったんですね。でも、その後衰退してしまい、近年、また盛り上がりつつあります。