「トヨタ・タンクカスタムG−T」(「Wikipedia」より)

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 ドライブの途中で休憩しているのだろうか、自動車の中でカップルがくつろいでいる。体を寄せ合いながら、どちらともなくその先の展開を期待しているようだが、なかなか進展しない。そんな状況を打破するように、女性が彼氏を押し倒したかと思えば、その側にあるランプを消して……。再び明かりが点いた時には女性の服がはだけている。

 肉食女子の生態を見ているかのようなストーリーだが、これはあの世界的な自動車メーカー、トヨタ自動車が発信しているインターネット動画の内容だ。

 2016年11月に発売された軽自動車「TANK」のキャンペーンサイト「TANK me」では、「1LD-CARで、やりたいことにLIKE!しよう。」というキャッチコピーで、TANKの魅力を訴求するショートムービーを公開している。「1LD-CAR!」という謳い文句の通り、TANKは車内をフルフラットにすることで部屋のようにゆったりと過ごせることもウリのひとつだ。

 冒頭の動画は、ドライブデートを楽しんだカップルが、車中で愛を育むようなシチュエーションで、「#ドライブデート」「#からのフルフラット」「#ランプを消して」というハッシュタグをつけて、視聴者の想像を掻き立てている。

 これは「クルマをラブホテル代わりに使おう」というトヨタからの提案なのかと、ネット上を中心に話題になっているので、動画を目にした人も多いかもしれない。

 ラブホ代わりの自動車といえば、1996年に発売された本田技研工業(ホンダ)の「S-MX」が有名だ。キャッチコピーは「恋愛仕様。」で、まさにカップルユースを見越した宣伝戦略が取られており、世間では「ラブホカー」「走るラブホ」などと呼ばれていた。こちらもフルフラットシートが採用されており、車内がベッドのように使えるのがウリだった。

 TANKもS-MXと同様に、ドライブデートを楽しむ若いカップルをターゲットにしているのだろうか。この動画を製作・公開した狙いはどのようなものなのか――。その真相を探るべくトヨタに問い合わせた。

 まずは本社の代表電話へかけ、今回の取材趣旨を伝えたところ、担当部署として教えられたのは、「トヨタ自動車株式会社 お客様相談センター」だった。そこで改めて受話器を取り、動画の公開意図を尋ねると、「関連部署に確認する」という回答が。その日のうちに結果を聞くことはできなかったが、広報に確認のうえ、後日改めて連絡をするという、ていねいな返答を得られた。

 それから2、3日後だろうか、トヨタから折り返しの連絡を受ける。その回答は、ターゲットは「若年層」で、公開した狙いは「TANKの魅力をわかりやすく伝えるために動画をサイトで公開している」とのこと。

 お客様相談センターということで、メディア取材とは思われていなかったのか。再度、ネット上での反響や、なぜこうしたカップル動画がつくられたのかなど、さらに詳しく話を聞きたいと取材を申し込んだものの、「これ以上の回答はできない」と断られてしまった。「魅力をわかりやすく伝えるための動画」と答えていることから、あえて多くを語らず、動画を見た人がそれぞれに利用シーンをイメージしてほしいということだろうか。

 動画の真の狙いがどこにあるにしても、こうして話題になることでTANKという自動車の存在を、テレビを見ない人にも広く知らしめることができたはずだ。それだけでもトヨタとしては成功したといえるのかもしれない。
(文=OFFICE-SANGA)