主婦のぺ・ドゥナがキュート!「チャンオクの手紙」より

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 唯一無二の世界観を持ち、これまでもアニメや海外作品などさまざまなことに挑戦してきた岩井俊二監督が、ネスレの4話構成のショートフィルム「チャンオクの手紙」で韓国の人気女優ぺ・ドゥナと初タッグ。エピソード1にあたる「チャンオクの朝」がYouTubeネスレ日本公式チャンネルで配信開始から約2週間の時点で20万回を超える視聴回数を記録している。

 ヒロインはどこにでもいるような専業主婦のウナ。口うるさい姑の介護に明け暮れながら、何も手伝おうとしない夫、生意気盛りの娘と息子と暮らす彼女の日々を温かな目線で描いている。

 ぺ・ドゥナと初めてタッグを組んだ岩井監督は彼女の印象について「非常に自然で個性的で、素晴らしかった」と絶賛。映画『スワロウテイル』(1996)のChara、『花とアリス』(2004)の蒼井優をはじめ、これまで多くの女優たちの魅力を引き出してきた岩井監督だが、本作でのぺ・ドゥナもどんなにつらくとも顔に出すことのない健気な主婦を自然体で演じており、新たな魅力を見せている。岩井監督に、女優の持つ魅力を最大限に引き出す秘訣を尋ねると「特に秘訣というものはないのですが、日々どこかで人間を観察しているんだと思います」と回答。

 人を見ているからこそ、キャラクターたちの魅力を作り上げることができる。それは撮影の場を海外に移したところで変わらない。ぺ・ドゥナをはじめ韓国のキャストたちとの短編製作を楽しんだという岩井監督は「役者の感情表現はほとんど変わらない。日本人にとって怒っている演技が、他の国では喜んでいる演技に見えるということはないんです」と演出が万国共通であることを強調。監督、スタッフ、そして役者たちの演技が映像の中で一体化して昇華されていることは、岩井監督自身「一番の挑戦だった」と話す冒頭の長回しシーンからも伝わってくるだろう。

 本作は全編を韓国で撮影。「韓国でいつか映画を撮りたいとずっと思っていたので、今回は短編ですが、やっと夢が叶いました」と本企画の実現を喜ぶ岩井監督。言葉の壁も全く気にならなかったそうで、「逆にどうしてこんなに言葉が違うのか不思議に思いました」と意外な答え。「言葉というツールの進化が、人間同士わかり合う方向に進化しなかった、むしろ暗号のように排他的に進化したという持論を裏付けてくれました」と振り返る。

 昨年岩井監督が発表した映画『リップヴァンウィンクルの花嫁』は映画のみならず小説、テレビ、WEBという異なる形態でそれぞれかたちを変えて届けられ、ファンを熱狂させた。今回もまた、日本語・韓国語・英語・繁体語の字幕をつけてのネット配信という新たな方法を通して、世界に向けて作品を発表。今後、既存の方法にとらわれない岩井監督の映像世界がどのように広がっていくのか期待したい。(取材・文:森田真帆)