防衛省のシンクタンク・防衛研究所は中国の軍事動向に関する17年版の報告書で台湾との関係に初めて言及し、「台湾侵攻を企図した演習の実施も想定される」と指摘。これに中国が反発している。写真は台湾総統府。

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2017年3月3日、防衛省のシンクタンク・防衛研究所が公表した中国の軍事動向に関する17年版の報告書に中国が反発している。中国と台湾の関係に初めて言及。「台湾が自衛に力を注がなくなると、中国の海洋進出などがさらに進み、台湾侵攻を企図した演習の実施も想定される」などと指摘しているためだ。

防衛研は中国の軍事動向を詳細に分析するため、毎年度、報告書をまとめて公表。今回は「変容を続ける中台関係」として初めて取り上げた。

報告書は「台湾は中国にとって、統一すべき対象であるとともに、米国と対峙(たいじ)する前線であり続けている。台湾問題をめぐって、米中衝突が起きる可能性は冷戦期から継続している」と前置き。「中国は大国化の中で海洋進出が可能となり、非常に強硬な行動を伴うことで、地域の安定に影響を与えている。台湾が自衛に力を注がなくなると、中国の行動がさらに拡張的になる可能性もある」とみている。

その上で「台湾は海上交通上の要衝に位置し、東アジアでの地政学的対立が深まる中で、戦略的重要性は上昇している。中国軍の台湾侵攻を企図した演習の実施や武器の増強、サイバー攻撃の強化などは十分に考えられる」と述べている。

さらに、報告書は昨年5月、台湾で独立志向の強い蔡英文政権が誕生した後、中国が国際民間航空機関(ICAO)総会など国際会議への台湾代表の出席を妨害したほか、台湾の最大野党・国民党への接触を強めていると分析。「今後もさまざまな圧力の行使や切り崩しを図っていく」との見方を示している。

中国国営新華社通信などによると、中国外交部の耿爽報道官は防衛研報告について、「台湾問題は中国の内政であり、中国の核心的利益に関わる」と強調。「日本側に対して、実際の行動によって中日共同声明など四つの政治文書の原則と精神および『一つの中国』原則を堅持するとの約束を実行し、台湾関連の問題で言動を慎み、『台湾独立』勢力にいかなる誤ったメッセージも発せず、地域の平和・安定を損なうことをせず、中日関係の改善に新たな障害をもたらさないよう促す」と批判した。中国共産党中央委員会機関紙・人民日報系の環球時報は「報告は台湾を大陸と同列に国家政治的実体とした」と非難した。

台湾有事に備えた中国の基本戦略は米軍、特に空母打撃群の接近を阻止することとされる。1996年の台湾総統選挙を控え、独立志向の李登輝氏の優勢が伝えられると中国は台湾近海に向けてミサイルを発射、軍事的緊張が高まった。これに対し、米国は空母2隻を派遣するなどして中国をけん制した。

その後、中国は軍の近代化を急ぐ一方、05年には「反国家分裂法」を制定した。同法には台湾が独立を宣言した場合は、「非平和的手段」を取ることも明記している。(編集/日向)