毎年3月の第2木曜日は「世界腎臓デー」。だからではないが、慢性腎臓病(CKD)は放置すると腎機能の低下が進み、腎不全になれば人工透析や腎移植が必要になる。初期症状がほとんどないため、早期発見には健康診断の結果に注意しておくことが必要だ。
 腎臓病に詳しい東京社会医療研究センター・村上剛士主任はこう言う。
 「慢性腎臓病は、ほとんどが無症状のために放置する人が多く、成人の8人に1人が透析を必要とする腎不全の予備軍と言われます。CKDは透析に至るリスクがある以前に、心臓や血管に負担を与え、心筋梗塞や脳卒中の発症を高める。日本の研究でも、心不全の入院患者の70%以上が、中等度以上のCKDを合併していたとの報告もあります」

 がんや糖尿病などを合併している病気は様々あるが、最近は「心腎連関」という言葉が注目されている。心臓疾患と腎臓疾患はお互い、密接に関係していることが分かってきたからだ。
 日本では、高血圧が心臓疾患をはじめ、色々な病気のベースになっているケースが多い。血圧は高い状態が長ければ長いほど動脈硬化が進み、血管も痛む。さらに血管が傷めば、重要な臓器がダメージを受ける。

 昭和大学病院血液センター腎臓内科の担当医は、こう説明する
 「高血圧というのは腎臓に対し大きなダメージを与えます。腎臓は血液をろ過して老廃物や塩分を尿として排出する役割を担っていますが、血圧をコントロールしたり、赤血球を増やすホルモンを産出する機能もあります。そのため、腎臓の機能が衰えると尿が出にくくなり、老廃物や毒素が体内に溜まりやすくなる。すると毒素症を起こし、最悪の場合、死に至るのです。腎臓はそれくらい重要な臓器ということです。腎臓は血液をろ過する100万個以上の『ネフロン』で構成されている。血圧が高い状態が続くと、この『ネフロン』が減少し、腎臓の構造そのものが衰え、薄っぺらの状態になってしまう。もちろん、そうなれば腎臓の機能はぐんと低下します」

 慢性腎臓病には様々な原因があるが、例えば「ネフロン」が機能しないネフローゼ症候群などの疾患がある場合、進行しなくても、むくみなどの症状が出ることがあるという。しかし現在、増えているタイプの慢性腎臓病は、前述の通り、症状が全くないケースがほとんどだ。
 「その場合は生活習慣病が関係しており、高血圧や糖尿病、脂質異常症、痛風・高尿酸血症といったものが血管にダメージを与えることが要注意。放置すれば動脈硬化が進み、血液の流れが悪くなる。腎臓にはトータル200万個といわれる『糸球体』(毛細血管でできた微細な球状の組織)がありますが、動脈硬化の進行によってこれが壊れていくのです」(健康ライター)

 腎臓の専門医も、こう指摘する。
 「糸球体は血液から老廃物を濾過して尿を作る、腎臓の働きには欠かせない組織です。しかし、破壊によって尿中に蛋白質が漏れるようになったり、腎機能の力が落ちていけば、慢性腎臓病と呼ばれる状態になります。そうなると、自分の腎臓だけでは老廃物の濾過ができなくなり、その働きを代替するものとして人工透析が必要になってしまうのです」