”移民活用”で経済成長! 「北欧のシリコンバレー」とは?

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「経済×地理」で、ニュースの“本質”が見えてくる!仕事に効く「教養としての地理」

地理とは、農業や工業、貿易、交通、人口、宗教、言語にいたるまで、現代世界の「ありとあらゆる分野」を学ぶ学問です。

地理なくして、経済を語ることはできません。

最新刊『経済は地理から学べ!』の著者、宮路秀作氏に語ってもらいます。

労働力不足に悩む、北ヨーロッパ諸国

 国としてGDPを高める方法は、「人口を増やす」、もしくは「国民1人当たりGDPを高める」です。

 しかし人口は急激に増えませんので、国民1人当たりGDPを高めるほうが現実的です。例えば、スイスやベルギー、デンマークなどの人口小国では医療に力を入れており、3ヵ国の輸出統計の上位には「医薬品」が登場します。

 ところで北ヨーロッパには、世界的に見ても人口が少ない国が多くあります。

 北ヨーロッパといえば一般的に、アイスランド、デンマーク、ノルウェー、スウェーデン、フィンランドの5ヵ国を指します。広義の「北ヨーロッパ」は、これにエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト三国を含めた8ヵ国を指します。

 アイスランド33万人、デンマーク570万人、ノルウェー521万人、スウェーデン988万人、フィンランド549万人、エストニア131万人、ラトビア214万人、リトアニア292万人です。

 これは国内市場が小さいことを意味します。そのため、内需(国内需要)よりも外需(国外需要)を優先しています。

 国際競争力を高めるために、GDPに占める研究開発支出の割合が高く、知識集約型の先端技術産業の発展に力を入れています。

 また、年少人口割合が17.3%、老年人口割合が20%に迫る勢い(19.9%)で少子高齢化が進んでいます。

 労働力不足は国の経済成長にとってマイナス要因です。そのため、1人当たりの生産性を高める必要があります。

 人口が少ないということは、産業構造の転換スピードが速く、それに合わせて就業機会の構造が変化します。1970年代には製造業のシェアが高かったのですが、1990年代からは先端技術産業に従事する労働者を増やしました。

「北欧のシリコンバレー」とは?

 シスタという街があります。シスタはスウェーデンの首都、ストックホルムの中心部から地下鉄で15分の場所にあり、元々は軍用地でした。1970年代より企業の進出が始まり、通信機器メーカーのエリクソンはITとラジオの研究開発を始めました。

 1988年になると、エリクソンは第2世代移動通信システムであるGSM(Global System for Mobile Communications )を開発しました。GSMは世界の多くの国で使用されていて、実質的に無線通信方式の世界標準技術となっています。

 エリクソンは一時期、携帯電話端末の製造も手がけていましたが、隣国フィンランドのノキアとのシェア争いから撤退し、通信事業に特化しています。

 エリクソンだけでなく、IBMやマイクロソフトなどもシスタに北欧事業の拠点を構え、スウェーデン王立工科大学やストックホルム大学の研究機関も進出しています。シスタが「北欧のシリコンバレー」と呼ばれる所以です。

 これらの理由により、スウェーデンの移民は、いわゆる「高度人材」と呼ばれる人たちが非常に多いことで知られています。