厚生労働省は、3月1日、健康増進法改正案の骨子を発表した。一部の例外を除き、レストランや居酒屋では屋内禁煙にする、という急進的な案が盛り込まれており、官公庁や老人福祉施設、大学、体育館も屋内は禁煙。喫煙所の設置すら認めないというのだ。

これに対して、「酒飲む場の喫煙くらい許可してほしい」とレストランや居酒屋での一律禁煙に反発する声が多数出ていた。

そうした中で意外なところからも、反対意見が挙がった。全国社会福祉協議会(全社協)が建物内での喫煙所設置を認めるように求めているという。

「隠れて吸うようになると火の不始末から火災の恐れも」


全社協は、福祉サービス利用者や関係者の活動支援、制度改善などに取り組む全国組織。自民党の厚生労働部会で、福祉施設内の喫煙室設置を認めるよう意見を述べたという。

同団体の担当者はキャリコネニュースの取材に対し、屋内を全面禁煙にすると様々な弊害が生じると語る。

「入所施設を全面禁煙にしてしまうと入所者が隠れて吸ってしまう可能性もあり、火の不始末から火災につながる恐れもあります。また建物外に出て煙草を吸おうとした入所者の所在がわからなくなってしまうことも考えられます」

加えて、施設内で禁煙を強いられた喫煙者が不安定になるという危険性もあるという。

厚生労働省の調査によると、60歳〜69歳の男性の喫煙率は32.5%、70歳以上でも15.2%と高齢者の喫煙率は意外と高い。女性でも60〜69歳で6.3%、70歳以上で2.5%の人が喫煙者だ。食後の一服を楽しみにしている高齢者もいるだろう。施設内は全面禁煙となれば、少なくない人々が不便を被ることになりそうだ。

「喫煙所が外だと一応着いてかないといけないから現場スタッフ一人減る」

福祉協議会の意見が2月28日、あるツイートからネット上に拡散された。「過度な規制は思わぬところの影響がある」と納得する声が多数上がった。かなりの嫌煙家だという人も「これに関しては(中略)『一部例外』を認めないとな」と例外措置の必要性を感じたらしい。

介護施設の現場を知っていると思しき人も、厚労省の方針を危惧するツイートをしていた。

「喫煙所外で利用者に喫煙者居ると一応着いてかないといけないから現場スタッフ一人減るんだよね…残った一人で20数人見たりザラ」

介護付有料老人ホームを運営する企業の担当者も同様の懸念を口にしていた。現在は屋内に喫煙室を設けて対応しているが、屋内全面禁煙になると、喫煙所を屋外に設置しなければいけなくなる。

「入居者を1人で外出させるわけにはいかないため、たとえ喫煙所であっても職員が同伴しなければなりません。入所者の中には認知症の方や帰宅願望のある方もいるため、そのまま行方不明になる危険があるのです。また喫煙室を設置しないと入居者が集まらないという経営上の問題もあります」

やはり福祉施設内での全面禁煙は、必要がないだけではなく、入所者を危険に晒したり、職員の手間が増えるなどの弊害を生むようだ。喫煙所の設置で分煙を徹底することができれば、受動喫煙を防止できるだけでなく、喫煙者や職員も快適に過ごせるのではないか。