<2009年にイランの核燃料施設をマルウェア「スタックスネット」が破壊してから8年――日々進化するサイバー戦争の実態を明らかにする新刊『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』>

先月24日、アメリカのNSA(米国家安全保障局)の長官で米サイバー軍の司令官でもあるマイク・ロジャース海軍中将が、カリフォルニア州で開催された海軍のカンファレンスに登場した。そして、そこで語った発言がニュースとなった。

ロジャースは、これまで米軍はサイバー兵器をほとんど「内部で作ってきた」が、「この先5年、10年と長く持続できる形態なのか......民間ができることをきちんと活用できているのだろうか」と疑問を呈し、今後はもっと民間とも協力してサイバー分野の兵器を購入したいと述べた。

つまりサイバー攻撃に使うサイバー兵器の開発を、これまで以上に軍需産業に担ってもらいたい、ということだ。すでに開発を行っている企業はもちろんあるが、協力関係をもっと強めたいということらしい。

最近このサイバー兵器にからむ話題をメディアで見る機会が増えたが、そもそも「サイバー軍」や「サイバー兵器」と言われても、何のことなのかピンと来ない人は多いかもしれない。

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筆者が先月28日に上梓した『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋刊)では、数多くの関係者への取材から、アメリカや中国、ロシア、イスラエル、イラン、北朝鮮などのサイバー政策やサイバー攻撃の実態を掘り下げている。

サイバー戦争の現実についての詳細は著書に記したが、ここでは、「サイバー軍」と「サイバー兵器」とはいったいどういうものなのか見ていきたい。米国のサイバー部隊などについて知ると、サイバー空間の実態が見えてくる。

09年に設立された米サイバー軍

まず前提として、米軍はサイバー空間を「陸・海・空・宇宙」に次ぐ"戦場"であると定義している。そこは新たな戦闘の場で、マルウェア(悪意ある不正プログラム)を使って、コンピューターで妨害工作を行ったり、施設や工場などを爆破または破壊したりすることが可能になっている。

ただセキュリティ関係者にしてみれば、この話はもう古い。2011年に米国防総省が「サイバー空間作戦戦略」の中でサイバー空間を初めて戦場と呼んだ時、メディアはこの話を最新情報として取り上げたが、当時、サイバー問題に詳しい米政府や米軍関係者には、その認識はもう古いと指摘する者も少なくなかった。国防総省が関与する実際のサイバー戦略の実態を全く反映していないと批判されたのだ。

山田敏弘(ジャーナリスト)