10番と腕章を託され、重責を担う齋藤を旗頭に、チームはひとつにまとまりつつある。浦和に勝った後の札幌戦で、その真価が問われる。写真:滝川敏之(サッカーダイジェスト写真部)

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 某日、齋藤学のインタビュー取材の前に、あるクラブスタッフと雑談する時間があった。その会話の中で、スタッフの言った何気ない一言が印象に残った。
 
「1月のタイ遠征の時も、新しく加入した選手たちが早くチームに溶け込めるように、僕らはいろいろとやっていて……」
 
 別段目新しいことではないかもしれない。それでも、チームが進むべき道を歩んでいることを再確認できた一言でもあった。
 
「ピッチに立つ選手たちの頑張りだけでなく、フロントも含めて、クラブ全体がひとつの方向を向いているチームが結果を出すもんだと思うんですよ」と記者が言えば、そのスタッフは深くうなずいてくれた。
 
 今の横浜が“結果を出すチーム”なのかは、正直なところ、まだ分からない。それでも、インタビューに応じた齋藤が「一体感」というフレーズを強調していただけに、今季のチームには期待せずにはいられない。
 
 中村俊輔という大黒柱がいなくなった。近年の横浜を支えていた榎本哲也も、兵藤慎剛も、小林祐三もクラブを去った。
 
 失ったものは大きいが、だからこそ、これから手にするものもまた大きいはずだ。
 
 開幕戦で浦和を3-2で下した後のミックスゾーンで、「俊さん」とかつての10番を口にする選手が少なくなかった。
 
「自分は俊さんが付けていた25番を与えられているから、その番号に恥じないように」(前田直輝)
 
「いろんな意味で、俊さんに頼っていた部分があるから」(飯倉大樹)
 
「これまで俊さんが背中で見せてきたもの。それを自分も見せていきたい」(齋藤)
 
 クラブの象徴だった俊輔のいない横浜は、どれほどのものなのか――そうした見方は間違いなくあっただろうし、選手たちも感じていたはずだ。
 
 それだけに、浦和戦の勝利は、勝点3とはまた別の次元で、価値あるものだったと思う。目の前にいる相手は浦和だったが、その向こう側に、横浜の選手たちは、越えるべき過去という敵をも見据えて戦っていたのではないだろうか。
 
 新キャプテンは「俺から発信していかないと」とやる気に満ちている。
 
 レフティの25番は「失ったものを埋めて、(先達者たちを)越していくのが、残された人たちの使命」と表情を引き締めた。
 
「若いやつが困っている時には、自分も含めて上の人間が支えてやらないと」という守護神の言葉が頼もしく響く。
 
 横浜が生まれ変わろうとしている。劇的な逆転勝利を収めた浦和戦がフロックでないことを証明するためにも、続く札幌戦は負けるわけにはいかない。ある意味、真価が問われるこの試合で、選手たちはどんな戦いを見せてくれるのか。
 
「浦和には勝った。昇格組の札幌に負けるわけがない。開幕2連勝の勢いで王者・鹿島のホームに乗り込んで良い試合をして、その後の新潟戦、C大阪戦も負けなしで切り抜けて、俊さんのいる磐田を日産スタジアムで叩く! これが序盤戦の理想形ですよね」
 
 嬉々として語る記者に対し、冒頭で記したスタッフは「そう浮き足立たないで」とたしなめるように、静かに柔らかな笑顔を見せた。
 
取材・文:広島由寛(サッカーダイジェスト編集部)
 
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