山田孝之がカンヌ映画祭でパルムドールになるために映画を撮る……というコンセプトのドキュメンタリードラマ『山田孝之のカンヌ映画祭』。
テレビ東京系で金曜深夜0時52分放映。テレビ東京オンデマンドでも見られる。


8話は「山田孝之 キャスティングをする」。
河瀬直美のおしかりと洗礼をうけた7話。覚醒後、ものすごい勢いで迷走を始めたかのように見える。
しかし、彼の考えは意外と一貫しており、ブレていない。パイロットフィルム時から言い続けているのは「本物を使いたい」。

無職オーディション


リアルに前科がある人達の中から、オーディションをしたい、と山田孝之は言う。
芦田愛菜演じる「らいせ」の母親の、愛人。前科のある人たちを従業員に雇っている男性という設定だ。
だから実際に前科のある人を起用したい、空気がにじみ出る人がいれば、俳優も引っ張られていい効果がある、と言う。

「やめない?」と真顔で言う山下敦弘監督。そこで「無職の人に募集をかける」という折衷案が出る。
山田孝之「定職についてない人を集めてその場で(前科があるか)聞きます。可能性は高いかもしれないですね、定職についてるよりは」
ものすごい偏見と差別っぷり。
このざっくばらんさが、プロジェクトを進めてきた原動力なのは事実。ブレーキを踏む気配を見せない。

三文芝居祭り


刺されて死ぬシーンのオーディション。
素人(多分)の反応が見られるのが楽しい。
集まった自称・無職の人たちが、芦田愛菜と演技をする。

「愛菜ちゃんどうしたの、どうしたの愛菜ちゃん、愛菜ちゃんだめだよ」おじいちゃんと孫みたいだ。
「なぜ。アイドンノー。ホワイ」なんで英語になったんだろう。
「いててて、いてててて」とフラフラして、死ぬのがヘタなエロ漫画家の男性。

ついケラケラ笑ってしまう芦田愛菜。
「楽しいです」

ここから4人にしぼって最終審査に入る。相変わらず芝居は全くの素人。
「アイドンノー」おじさんや、死ねないエロ漫画家が選ばれており、大根な演技が続く。
とはいえ脚本が一切ない状態で、包丁のおもちゃを持った芦田愛菜との、シチュエーションだけ決まったアドリブ合戦。
この演技かなり難しい。

山下敦弘ママを刺殺


最終審査の時、母親役がいなかったので、急遽山下敦弘監督が引っ張り出される。
彼は役者ではないので、どうすればいいかわからずアタフタ。
最初は細い声で「キャア」と言いながら走り出し、芦田愛菜が後を追う、という鬼ごっこ状態。この姿に、Twitterのタイムラインでは「山下監督回だ」と多数の声があがるくらいに、かわいかった。

山田孝之が、山下敦弘に対してのみ本物の包丁を使うよう指示を出してから、空気がかわる。
山下敦弘は逃げ腰になり、包丁を持った芦田愛菜の腕を捕まえて、離そうとする。
目に見えて動きが生々しくなった。
次第に、自分の代理芝居にどうアドリブを入れるか、真剣に考え始めるようになる。

本来の流れは「母と愛人の元に飛び込む→愛人を刺して母も殺す」というものだった。
演技を重ねるにつれ、芦田愛菜の解釈が深まり、演技が進化していく。
すぐに殺さず、「らいせの寂しさ」をイメージに追加。母に抱きつきつつも、激情で殺してしまう、という流れを作る。
それをじっと見る、山田孝之。
本物の包丁をもった芦田愛菜と山下敦弘の演技から、冗談っぽさが抜けていく。

山田孝之の無茶振りな「本物」追求。
参加者はともかく、芦田愛菜と山下敦弘の演技には、影響が出ている、ように見える。

前回の河瀬直美の発言。
「彼がそこで生きてくれていることのほうが、カメラがその場で回っている瞬間が、リアルでしょ」
「形として何かきれいに作るというよりは、本気でうそをつく」
映画には本物を使いたい、にじみ出るものや俳優に影響していくものを撮りたい、という考え方は、この発言と通じる部分がありそうだ。それが成功するかどうかは別として。

グッドフェローズ


もう一つ求めたリアルは、首吊りだった。
らいせの父親役に抜擢された、村上淳。俳優魂の強い彼に、首吊りの演技を依頼。
プロの首吊り師・首くくり栲象でも、最速で7年かかったテクを短期間でやってほしいという。
村上淳「ぼくが吊られてるシーンは栲象さんがやって、って言うんじゃダメなんですか?」
山田孝之「えっ、吹き替えってことですか」

見つめてくる山田孝之に対して、考えた末OKする村上淳。
彼の着ているTシャツに書かれた文字は「グッドフェローズ」。
直訳すると「いいやつ」。

9話タイトルは「村上淳 木になる」。とうとう山田孝之の名前が消えた。
重要な母親役もまだ決まっていない。
クランクアップまで、あと16日。

(たまごまご)