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東京都立川市の市立小学校7校で2月に発生した集団食中毒で、原因食品と特定された「刻みのり」について、大阪の食品会社「東海屋」からのりを刻む作業を委託された大阪・北区の個人業者が、のりを機械に入れる際に、食品会社との取り決めに反して、手袋をせずに素手で作業をしていたことがわかった。

報道によると、個人業者は、作業効率が悪くなるため、長年、手袋を使わずに素手で作業をしていたという。ノロウィルスが流行った時期に吐き気がしたことがあるにもかかわらず、素手で作業を続けていた。「わたしが悪いと思わざるを得ません」と話している。

個人業者は今後、どんな法的責任を負う可能性があるのか。また、作業を委託していた食品会社にはどんな責任があるのか。田沢剛弁護士に聞いた。

●民事、刑事上の責任は?

「ノロウィルス混入の原因が、個人業者が手袋をせずに素手で作業をしていたことにあるものと証明されたことを前提に、個人業者と食品会社の責任を考えてみます」

個人業者の責任はどうなっているのか。

「民事上は、生徒たちに食中毒の被害を与えたわけですから、不法行為責任(民法709条)または製造物責任(PL法3条)として、生徒たちに生じた損害の賠償義務が生じます。

契約先である食品会社に対しても、不法行為責任のみならず、取決めに違反した債務不履行責任(同法415条)として、同会社に生じた損害の賠償義務を負うことになります。

刑事上は、食品衛生法違反として、3年以下の懲役または300万円以下の罰金に処せられる可能性があります(食品衛生法71条)。さらに、業務上の注意義務に違反して人に傷害を負わせたことになりますから、業務上過失致傷罪として、5年以下の懲役若しくは禁錮または100万円以下の罰金に処せられる可能性があります(刑法211条1項)」

民事、刑事ともに、様々な責任を負う可能性がありそうだ。では、食品会社の責任はどうなのか。

「民事上は、衛生管理不行届き(過失)があったものとして、不法行為責任(民法709条)が生じる可能性がありますし、製造物責任(PL法)も考えられます。

刑事上は、個人業者と同様に食品衛生法違反の罪に問われる可能性がありますが、業務上過失傷害罪については、あくまでも自然人を対象としていますので、法人である食品会社は問題になりません(法人の役員が業務上過失傷害罪に問われる可能性は否定できません。)。

また、個人業者及び食品会社のいずれについても、食品衛生法に基づき、営業停止等の行政処分を受ける可能性があります」

(弁護士ドットコムニュース)



【取材協力弁護士】
田沢 剛(たざわ・たけし)弁護士
1967年、大阪府四条畷市生まれ。94年に裁判官任官(名古屋地方裁判所)。以降、広島地方・家庭裁判所福山支部、横浜地方裁判所勤務を経て、02年に弁護士登録。相模原で開業後、新横浜へ事務所を移転。得意案件は倒産処理、交通事故(被害者側)などの一般民事。趣味は、テニス、バレーボール。
事務所名:新横浜アーバン・クリエイト法律事務所
事務所URL:http://www.uc-law.jp