世界経済フォーラム(WEF)の2016年度の「ジェンダー・ギャップ指数」によると、ノルウェーは世界で3番目に男女平等において進んでいる国だそう(ちなみに、日本は111位)。

そんなノルウェーで、男性社会である消防署で働く女性に仕事やジェンダー観をインタビュー。また、世界全体で増えつつあるというイクメンという生き方を選択した男性が、育児をする中での本音を語ってくれました。

これまでの性別と職業の枠を超えて、自分自身が充実して生きるライフスタイルを選んだ2人にフォーカス!

消防士 ナーテンの場合 in ノルウェー

オスロ中心部から約20キロの都市アスケーで、消防士として働くナーテンさん。時間があるときはパーソナルトレーナーとしても働いている、というアクティブな彼女に迫ってみました。

―消防士になろうと思ったきっかけは?

アクティブな性格を活かせて、チームで一緒に人助けができる仕事がしたかったんです。それを考えた時に消防士がぴったりだと思い、19歳の時に目指しはじめました。

―仕事内容を教えてください。

火災が発生したときに屋内に突入して人命救助をすることが主な仕事内容です。そのほかも災害や車の事故などが起こったときにはレスキュー活動を行います。

―今までで体験した大きなチャレンジは?

まる1日続くほどの大火災が起こった時のことですが、救助活動に入るのもとても危険な状況でした。やっとの思いで家の屋根にのぼり、チェーンソーで屋根に穴を開けると煙がすごく最悪のコンディションで…。そこで、身動きが取れなくなっていた犬を発見したのですが、無事救助することができたときは嬉しかったです。

あと、炎が燃える子ども部屋に突入したときのこと。室内のクローゼットを開けると、恐怖のあまり隠れていた4歳の女の子を発見し、無事助けることができました。

これらは一例ですが、誰かの命を救えることは、何ものにも代えがたい最高の気持ちです。

―職場でジェンダーは、ナーテンさんにとって意味がありますか?

一番大切なのは「どんな心構えで働くか」ということ

性別を意識したことはないですし、女性は男性同様に素晴らしい消防士になれると思っています。もちろん、身体を鍛えるトレーニングなどはするべきですが、一番大切なのは「どんな心構えで働くか」ということだと思います。

―男性の多い職場のポジティブな面は?

とっても働きやすいんです! 複雑な人間関係の問題もないし、ジョークや笑いが絶えることのない職場なので。それにお互い家族のように信頼していて、気持ちよく働ける環境です。

主夫、ブロガー ジョンの場合in イギリス

金融関係の仕事をしている妻と8歳、4歳の2人の娘とロンドン近郊で生活をするジョンさん。6年前に主夫になるために自身の仕事を辞めたそう。パパの生活を綴ったブログが好評の彼が、イギリスで男性が子育てをするなかで感じる本音を語ってくれました。

―主夫になったきっかけは?

以前は共働きで、子どもを保育所に預けていました。家事もお互いあまりできず、慌しい日々を送っていましたね。そんななかで、娘にもっと目を向けて愛情を注いで育ててあげないといけないし今のライフスタイルを変えるべき、という思いはずっとありました。僕は当時、PRの仕事をしていたのですが仕事に喜びが見出せず…。逆に、妻は仕事が楽しくて、成果も出していました。だから論理的に考えて僕が主夫になろうと思ったんです。妻に話したところはじめは反対されましたが、すぐに賛成してくれて主夫生活がスタートしました。

―毎日、どんなスケジュールを過ごされていますか?

毎朝5時に起きて、2時間ほどブログを書いています。ブログの執筆は、僕の生活の一部なんです。朝7時に娘たちを起こして一緒にご飯を食べ、着替えさせてから学校におくっていきます。午前中は食事の買い物や掃除など、家事をしていますね。

お昼過ぎに次女を幼稚園へ迎えに行きます。その後は、一緒にDVDを観たり外に遊びに連れて行ってあげたり。

夕方には長女を学校に迎えに行き、娘2人を公園で遊ばせます。18時ごろには帰宅して、それから長女の宿題を手伝い。ディナーの準備をしてるうちに妻が帰宅し、みんなで夕食を済まします。

やっと1人の時間ができたときに、ランニングへ。1日に溜まったストレスを発散するのに、最適の方法なんです。

―実際、主夫になってからどう感じましたか?

初めは本当に大変でした。主夫という存在が、社会的に受け入れられ難いと感じることが多々ありました。イギリスの母親たちは妊娠中に出産前のクラスに通う人が多いのですが、そこで妊娠中のママ友グループがすでにできていて。男性である僕が、急にこの輪に入っていくのも気まずく…。それに、ママたちの中には男性のパパと仲良くなることで、変な噂をたてられるのを嫌がる女性もいるようでした。

なにより1番辛かったのは、公園などでママ同士が友達になって子供同士も友達になるというパターンが多いのですが、僕がなかなか社交的にママたちの輪に入れないことで、子どもたちまでが友達を作るチャンスを失っているのでは…と感じることが多々ありました。

―このライフスタイルのポジティブな面だと思うところは?

子どもと時間をたくさん過ごせることですね。そんなに多くの男性ができる経験ではないし、彼女たちのために食事を準備したり、成長過程の手伝いができることは本当に幸せです! 

それと、僕たち夫婦のスタイルを見ている娘たちがいつか成長した時に「(ジェンダーに)壁やリミットなんて何もないんだ」ということを知ってくれたら、と思っています。仕事に集中して成功している母の背中を見て「私たちも素敵なキャリアを築ける」と自信を持ってほしいし、家庭のことを男性がしている僕の姿を見て「男性と女性はこういうふうにも共存ができる」ということを学んでほしいと思っています。

また、主夫であるからこそ、政治家の会議に育児をする父親の意見を話すために参加したり、新聞などから取材を受ける機会もありました。素晴らしい機会で嬉しかったのですが、同時に、まだまだ「主夫」がどんなに普及していない存在かという現状にも疑問を持ちました。

―子育てにおいてのジェンダー的価値観は変わりましたか?

育児は孤独感をともなうこと。多くの女性がブルーな気持ちを味わうことを身をもって理解しました

妊娠、出産、授乳は、確かに女性しかできません。でも、それ以外のすべての育児は男性にもできる!と胸を張っていえます。

そして育児をすることはとても孤独感を伴うことだと強く実感しました。外に出かけて、友だちを作りにいこう!なんて気分にもなれないし、単純なことではありませんでした。多くの女性がなぜブルーな気持ちや強い不安感に悩まされるのか、身をもって理解したと思います。

だから主婦をしている女性を見る度に、尊敬の気持ちでいっぱいになります。子どもの世話をするのは、決して簡単なことじゃありません。本当にタフで、手が掛かるし自分だけの人生ではなくなります。

幸い、妻は僕の気持ちを理解してくれます。彼女は職場で20人の部下の仕事を管理するハードな仕事をしているのですが、いつも家に帰ってきて「僕のほうが過酷な役割をこなしている」と言ってくれます。

男性も一生懸命育児をきちんとこなすことができる、ということを社会に認識してもらえるようになってほしい、と日々感じています。

今後さらに「やりがいを感じること」を基準に仕事を選ぶ人が増えれば、生き方の選択肢もますますバリエーション豊かになっていくかもしれませんね。