メキシコと米国の国境にあるフェンス。 photo by Tony Webster via flickr(CC BY 2.0)

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 2月28日に行われたトランプ大統領の議会での演説で、不法移民対策については今後も強化して行くとしながらも、これまで表明していた検挙そして送還という厳しい表現から幾分か和らげた内容になった。メキシコとの国境の壁の建設についても建設に取り掛かると言及したが、メキシコに負担させるとは言わなかった。トランプの中で何かが変わったのだろうか?

 ひとつには、トランプ大統領自身に不法移民についての取り組み方に変化が現れたからであると言える。それは、その前日のホワイトハウスでの主要テレビ放送局の司会者らとの会食の席で表明された。トランプ大統領が移民法の改正を試みることに触れたというのだ。これまでの低技能の移民をも無差別に受け入れている現法から、移民のメリットを基準にして永住を認めるように法制化する方向で改正したいという考えを彼らの前で表明したというのである。

◆「米国人にメリットがあればOK」

 この会食には昨年大統領選挙戦中にトランプ氏との記者会見の席で不法移民について厳しい質問をして記者席から一時的に退席させられたある番組の司会者が所属しているテレビ局Univision も招待されたという。この集まりの場で、大統領が彼らの前で披露した内容がホワイトハウスに勤務するある高官から匿名で一定のメディアに伝えられたのである。そして、それが米国のヒスパニック系の紙面やメキシコと中米の一部紙面で早速取り上げられたのである。

 例えば、ロサンジェルスを本拠地に置くヒスパニック系紙面『La Opinion』にトランプ大統領がその会食の席で述べた内容が次のように報じられている。

<「もし米国が移民についてメリットを基本にすれば、即ち、技能面で高い能力を備えているとか、そうすれば(彼らの)預金も増え、給与の上昇といった、多数の利益をもたらすことになる。それはまた移民で生活に困った家庭をも助けることにもなる。そして、中流層を増やすことにもなる」>と大統領は語ったというのだ。そして、更に同紙は大統領が、<真の移民法は「米国人の仕事と給与の改善」、「国家の堅固な安全」、「法の尊重」という3本の柱に則ったものでなければならない>という考えを強調したことにも触れたという。(参照:『La Opinion』)。

 更に、同紙は大統領が彼の移民対策への取り組みから、現在、<悪者仲間や犯罪者を追放していることや、米国に蔓延ている麻薬カルテルとも戦っているお陰で、市民の安全も改善されている>と確言したことを報じた。しかし、同紙は<移民が犯罪を犯す傾向が非常に少ないということが統計で実証されている>ことには大統領は触れなかったと言及した。

◆メキシコとの関係改善が目的?

 この様に、トランプ大統領が移民問題について新たな見方をしているのは特にメキシコとの関係改善を図りたいという願いをもっていることからであろう。つい最近も、ティラーソン国務長官とジョン・ケリー国土安全長官がメキシコを訪問してペーニャ・ニエト大統領と関係改善を目的に会談している。

 現在、米国には不法移民は1100万人いると推測されている。その半分はメキシコ人である。それ以外に、中米のエル・サルバドール、ホンジュラス、グアテマラの3か国からの不法移民が多く占めている。

 では何故、危険を冒してまで米国に不法に入国しようとするのか。その理由はメキシコ人のほぼ半数に近い46.2%が貧困者だからである。その数は5530万人。彼らが生活できる為の働く場所がメキシコにはないのである。一番貧困者の多い州はグアテマラと国境を接する340万人のチアパ州で、州民の76%が貧困者とされている。その次にオアカ、ゲレロ、プエブラ、ミチョアカンの4つの州も人口の過半数が貧困者とされている。貧困者の多くは生活費を稼ぐ為に不法と知っていながら隣国の米国に出稼ぎで向かうのである。そして、米国で働いて得た収入を国に残した家族に仕送りするというのが彼らの生活パターンである。また、中米からの移民者の場合は貧困とさらに暴力が横行しており、それから逃れる為に移民を試みるのである。中米からは多くの子供が一人で移民を試みる場合も多くある。