膝の負傷からも順調に回復し、コンディションは上がってきている。攻守両面でクレバーに振る舞える山本が、調子を落としている常勝軍団を上昇気流に乗せられるか。写真:田中研治

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「90分できちゃいましたね」
 
 ミックスゾーンに現われた鹿島の山本脩斗は、少し照れくさそうにはにかんだ。
 
 2月21日、ホームで行なわれたACLの1節・蔚山現代戦に勝利した試合後のことだ。山本が「90分」を強調したのには理由があった。
 
 昨季終盤、チャンピオンシップにクラブワールドカップと連戦が続くなかで、不動の左SBは膝を負傷。元日の天皇杯決勝には強行出場したが、あまりに痛みが強すぎて前半終了とともに途中交代していた。
 
「(試合の)記憶はあるんですけど、痛すぎてきつかったですね。痛みに意識をとらわれすぎて、ところどころ覚えていないんです。だから、(小笠原)満男さんが相手選手と揉めていた場面も全然知らなかったくらいで……」
 
 その怪我の影響で合流が遅れていた今季も、開幕直前の水戸とのプレシーズンマッチにようやく間に合った状態だった。それだけに、蔚山現代戦でフル出場できたことに、本人も手応えを感じていた。
 
「前半もチャンスは作れていたので、辛抱強く守備をしていれば、絶対に得点できると思っていた。だから、なおさら自分は守備の部分を強く意識できればと思った」
 
 そこには、DFだからというだけでなく、昨季の戦いで得た経験値が大きい。山本は続ける。
 
「昨季1年間を戦って思ったのは、やっぱり先制点を奪われると、どうしても戦い方が難しくなるということ。それを避けるためにも、まずは守備をしっかりと意識したい。守備を安定させることは、自分の持ち味でもありますから」
 
 その言葉どおり、蔚山現代戦では前半をゼロで折り返すと、後半に入って流れをつかみ、鹿島は2得点を奪って勝利した。
 
 遡れば、ゼロックス・スーパーカップでも2-2の状況から途中出場した山本は、守備を落ち着かせると、83分にはロングフィードを供給し、鈴木優磨の決勝点をお膳立てした。守備だけでなく、しっかりと攻撃にも貢献する。持ち味である守備で見せることは、もはや当然、だからこそ--―。
 
「守備はある程度、声を掛け合いながら意思疎通できているところもある。昨季の経験もあるから、コミュニケーションを取らなくても分かる部分もありますからね。さらに組織として高めていく必要はありますけど、個人としては、もっともっと攻撃で前と絡んで、積極的に行けたらと思っています。(今季は)もうちょっと、自分の色を出していければいいかなって」

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 その色のひとつは“高さ”である。昨季の第1ステージ優勝を決めた福岡戦でCKから打点の高いヘディングシュートを決めたように、空中戦の強さは山本の武器だ。ただ、その強みは対戦相手に研究され、すでに知られているところでもあり、今季は新たなるカラーを加えようとしている。
 
「もともと相手の裏を取る動きが好きだったんですよね。だから、今季はそういったプレーも少し出していければなって思っています。右で攻撃を作っている時にも狙っていますけど、自分のサイドでボールを持っている時や、(昌子)源からボールを受ける際にも、もっともっとバリエーションを増やしていければと思う」
 
 0-1で敗れたFC東京とのJ1開幕戦では、西大伍の負傷もあり、右SBという新境地にも挑戦した。本人は「石井(正忠監督)さんからも、今季は左だけでなく、右で出ることも考えておいてほしいと言われている」と明かす。
 
 シーズン序盤はリーグ戦とACLとの連戦のため、ターンオーバーを採用する鹿島は総力戦を強いられている。ただ、山本の目を見れば、その過密日程すら楽しもうとしているように映る。
 
「今振り返れば、ですけど、2年前に(個人として)初めてACLに出場した時は、どこかACLだって身構えてしまうところがあった。でも、クラブワールドカップを経験して、今回はいつもの公式戦と変わらず、平常心で戦えている。右SBにしても、ボールの受け方とかは変わってくるので、慣れは必要だと思いますけど、ここから連戦が続きますし、どこであろうと、与えられたポジションでやるだけです」
 
 縁の下の力持ち――山本とは、まさにそんな選手だ。キャプテンシー漲る小笠原や、ゴールパフォーマンスの際立つ鈴木など、タレント性溢れる選手は多いが、山本のような献身的かつタフな選手こそが、常勝軍団を支えているのだろう。
 
 リーグ戦に続いて、アウェーに乗り込んだACLの2節・ムアントン・ユナイテッド戦にも敗れ、チームは公式戦2連敗となった。そんななか、山本がコンディションを上げてきているのは好材料と言える。
 
 少なからず調子を落としている鹿島において、いぶし銀のSBが守備を安定させ、攻撃でもチームを活性化させるはずだ。
 
取材・文:原田大輔(SCエディトリアル)