社長自らが現場で接客し、着想を得た激安オーダーメイド。湖中謙介社長にとって、「お客様のご不満、ご要望は宝」なのだ

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コナカが展開するオーダーメイドブランド『DIFFERENCE』が好調だ。紳士服のチェーン店は、1坪あたりの売上は年間100〜200万円程度だが、『DIFFERENCE』の売上は1坪あたりなんと1000万円超。どんな仕掛けがあったのか?(経済ジャーナリスト 夏目幸明)

社長自らが現場で接客し
お客から聞き出した言葉とは

「現場100回」は刑事ドラマだけの言葉ではない。優れた経営者はよく現場に出ている。

 例えばLCC業界で躍進するピーチアビエーション。井上慎一社長は出張等でピーチ便に搭乗すると、たまに「お客様、社長の井上でございます。本日はようこそ〜」と機内アナウンスをする。降りるときは、機内のゴミを拾う。社員やCAに向け「コストをかけずに、できる限りのサービスをしよう!」と自らの行動で示しているのだ。

 また、セブン銀行の二子石謙輔社長は、トップに就任する前、セブン-イレブンとイトーヨーカドーの店員として計2ヵ月働いた。成長の突破口は現場から見つかった。日本で働く外国人等が海外へ送金するとき、手数料が高く、手続きも銀行の窓口が開いている時間帯にしかできず困っていた。そこで同銀行は利便性が高いシステムを構築し、これを突破口に利用者を一気に増やしたのだ。

 コナカの湖中謙介社長も同様だ。彼は今も「接客をしているときが一番楽しい」と話すほどの現場好き。これが新たなビジネスを開花させた。

 昭和中期、紳士服は一着一着、「仕立て屋」がつくっていた。当然、値段は高く、だからこそ当時は「一張羅」という言葉が使われた。一着しかない貴重な服、といった意味だ。

 この言葉を死語に変えたのが、いわゆる「吊るしのスーツ」だった。郊外に敷地面積が広い店舗を出し、様々なサイズのスーツを大量生産してハンガーに吊るしておく。洋服の青山、紳士服のはるやま、コナカ等が、このビジネスモデルだ。

 特徴は、大量生産により低価格を実現したこと。また納期も短い。オーダーメイドは、湖中社長いわく「売れすぎると自社の首を絞める」ビジネスモデルだった。工場での生産が追いつかず、入社式を控えた春先などは、納品までに1〜2ヵ月待つこともあった。しかし吊るしのスーツは、簡単なお直しをすれば数日で受け取ることができる。

 その後、スーツは吊るしで買うことが当たり前になり、2000年前後から各社はファッション感度が高い店舗を構えるようになった。コナカなら「SUIT SELECT」、はるやまなら「Perfect Suit FActory (P.S.FA)」だ。

 紳士服業界がこのような変化を遂げてきたなか、コナカの湖中謙介社長は常に売場に立ってきた。そして数年前、接客中に興味深い声を聞いた。

「300着ほども吊してある中型店で接客していたのですが、お客様は何着か試着をされても表情が冴えず、帰ろうとなさるのです。私は名刺をお渡しし『どのような品があれば、お買い求めいただくチャンスがあったのでしょうか?』と尋ねました」

 お客さんは「社長さんだったんですか!?」と驚きながら、忌憚ない意見をくれた。「自分にぴったりなモノがなかった」「形も、色も、うまくいえないけど、どこか違う」という話だった。

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