2日、韓国メディア・韓国日報は、日本のみならず韓国でも大ベストセラー作家となっている村上春樹氏について、同じ「大人気」でもその背景にあるものは日韓で違いがあるとの記事を報じた。写真は村上春樹氏の作品。

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2017年3月2日、韓国メディア・韓国日報は、日本のみならず韓国でも大ベストセラー作家となっている村上春樹氏について、同じ「大人気」でもその背景にあるものは日韓で違いがあるとの記事を報じた。

2月24日、村上氏の4年ぶりとなる新作『騎士団長殺し』が初版130万部で発売され、「ハルキスト」と呼ばれるファンのみならず日本の出版界が沸いているが、韓国の出版界では同作の版権をめぐり激しい争奪戦が始まっている。10年の『1Q84』での先印税(契約金)が10億ウォン(約1億円)、13年の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』が16億ウォン(約1億6000万円)と推定されることから考えると、今作でその額は20億ウォン(約2億円)に迫るとの見方も出ている。韓国の中堅小説家の先印税は平均300万ウォン(約30万円)というから、村上氏に対する韓国からの熱視線は相当なものだ。

韓国でのこうした人気の根底にあるのは、1980〜90年代に登場した「ハルキ小説」への「憧れ」だというのが韓国文学界の一般的な見方だという。個人の姿を洗練された感性で描く点が、韓国人にとっての村上作品の最大の魅力との分析だ。

高麗大のキム・チュンミ名誉教授は論文「韓国における村上春樹」の中で、「作家と読者が乖離(かいり)され始めた」90年代以降、「読者が日本文学に引かれる現象がみられ、その中心にハルキがいたと言っても過言ではない」としている。また、韓国でジャズブームが起こり、スパゲッティーが登場し、ワインが飲まれ始めるなど、社会が「文化的」になった時期も、ちょうど村上作品が人気を得始めたこの頃と重なるという。文学評論家のイ・ミョンウォン氏も、「資本主義経済の急成長に合わせ、ハルキの都会的感受性が力を発揮する現象は他の国でも確認されている」とし、2008年の北京五輪の直後に中国で『ノルウェイの森』がベストセラーになったと紹介した。

一方、日本人にとっての村上作品を「高級なヒーリング文学」と断言するのは、早稲田大で客員教授を務めた文芸評論家の金應教(キム・ウンギョ)氏だ。氏は「独りでいることがあまりにも心細い」日本社会において、「ハルキの小説は社会的敗北者たちにとてつもない慰めをもたらす」と分析、大学の授業で『ノルウェイの森』などを読むと毎年涙を流す学生がいたとし、夜中に新作を買うため書店に並ぶ行為は「敗北者」たちにとっての「救いの行動」だとも述べた。

この記事には韓国の読書家とみられるネットユーザーからさまざまなコメントが寄せられているが、記事が論じた「人気の背景」には異論もあるようだ。「ただ面白いから読んでるだけだよ」「その辺の韓国の小説より、翻訳された日本の小説の方がずっと面白いしはまれる。ハルキとか、東野圭吾とか」といった意見や、村上作品の魅力について「誰かに何か教えてやろうという感じがしないところがいい。あの年でもまだ偉ぶっていないしね」「文章が読みやすいし集中できる」などとする声があった。

一方で、「好みの問題だよ」「文学的価値は別にして、読者の虚勢のために売れてる部分もあると思う」「翻訳がめちゃくちゃでとても読めなかった」「評判につられて読んではみたけど、いまいちピンと来なかったな」など、人気自体に疑問を呈する声もあった。(翻訳・編集/吉金)