3月3日12:50上映。『林こずえの葉』は、新米林業作業員・林こずえを通して、近代林業の現状を映し出す。『祖谷物語-おくのひと-』の蔦哲一朗監督が、三たび地元・徳島にカメラを向けた。

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 環境をテーマにしたグリーンイメージ国際環境映像祭が3月3日〜5日、東京・日比谷図書文化館コンベンションホールで開催される。映像制作会社「グループ現代」創始者で、農業や環境問題を題材に作品を作り続けてきたドキュメンタリー監督の故・小泉修吉さんの遺志を受け継ぐ形でスタートを切り、今年で4回目。映像を通して人類の共通遺産である環境とどのように共存し、守り続けていくかを考える濃密な3日間だ。(取材・文:中山治美)

コンペティション部門への応募作は年々増加

 特集上映ならよくあるが、環境問題に特化し、コンペティション部門(以下、コンペ部門)もある映画祭となると珍しい。2015年からは世界35の環境映画祭から成る組織グリーンフィルムネットワークに、日本で唯一参加している。その影響もあってかコンペ部門への応募は年々増加しており、今年は48の国と地域から194作品が届いたという。上映されるのは、そこから選考委員によって選出された15作の入賞作。一言に“グリーン”と称しても切り口は実に多様で、特に都会生活に慣れてしまった人たちは、いかに自分が狭い世界で暮らしているか、気づかされることが多いだろう。

 まさかの主人公が同じという、福島第一原子力発電所事故後も避難解除指示準備区域の富岡町に住み続ける松村直登さんを追った中村真夕監督『ナオトひとりっきり』(日本)とフランチェスカ・スカリージ&マーク・オレクサ監督『ハーフライフ・イン・フクシマ』(スイス・フランス)。かつて東西ドイツを分断していた有刺鉄線間の無人地帯がいま、野生動物の生息地となっていることを映し出すウーヴェ・ミューラー監督『無人の国境線がもたらしたもの-再生された自然』(ドイツ)。

環境映画にはトレンドがある

 さらに今年は「海」をテーマにした作品の応募が多かったという。うち、北極圏近くの、石炭産業が主流の街が抱える汚染問題を描いた『ロングイェールビーン 極北の街』(フランス)、海洋に漂う廃棄物の行方と影響を調査した『海-消えたプラスチックの謎』(フランス)、熊本県民テレビ制作『生きる伝える"水俣の子"の60年』(日本)、HTB北海道テレビ放送制作『とけてゆくスイス 氷河×光×地球の未来』(日本)の4作が入賞した。

 同映画祭実行委員会事務局長の尾立愛子さんが語る。

「環境映画の面白さは、製作者が今、撮れるものをカメラに収めているということ。なので毎年面白いようにトレンドがあるのです。東日本大震災や洪水など水害が多かった年は水。エネルギー問題をテーマにした作品が多かった年もありました。私たちの映画祭は選考委員はいても、(映画祭側がテーマを決めて作品を選ぶ)プログラマーはいません。作品が自ずと(上映すべき作品を)プログラミングをしてくれるのです」。

アジアで初めて環境をテーマにした国際映画祭

 本映画祭は歴史こそ浅いが、前進は1992年に創設されたアース・ビジョン地球環境映像祭。アジアで初めて環境をテーマにした国際映画祭だ。同年には、ブラジル・リオデジャイロで「環境と開発に関する国際連合会議」(通称・地球サミット)が開催されており、環境問題への関心が一般レベルで高まり始めていた時期だった。だがアース・ビジョン地球環境映像祭は主催団体の組織変更などで2012年度の21回で終止符を打つことに。当時のスタッフが主体となって、2013年にグリーンイメージ国際環境映像祭として新たなスタートを切った。

 「地球サミットからの21年における映像祭は、製作者のモチベーションをあげるために存在していた部分もありました。しかし、2011年3月11日の東日本大震災が国内だけではなく、世界に及ぼした影響は大きかった。それまでは自然や動物の神秘や美しさを捉えて環境を大切にしようという普及啓発的な意味合いを持った作品が多かったのですが、もっと人と自然との関わりや、その中で育まれてきた共存していくための知恵、さらに土地土地に根ざした問題をテーマにしたものなど、作品傾向が変化してきたように思います」(尾立さん)。

通常の映画祭と違う来場者層

 昨年3月23日〜25日に開催された第3回に参加した。会場に着いてまず驚いたのは、通常の映画祭で見られがちな映画おたくはほぼ皆無で、環境問題に関心の高そうな主婦グループや、実際に事業に携わっている関係者が中心。毎回特別上映プログラムがあり、この年のテーマは「馬と暮らす里山」。東北地方で現在も行われている馬による木材の搬送方法である馬搬(ばはん)にスポットをあてたドキュメンタリー映画『里馬の森から-森を活かす古くて新しい技術・馬搬』(2016)の上映と、シンポジウムが行われた。パネリストには、同作にも出演している馬方の岩間敬さんや、馬耕を用いて農的生活を行なっている加藤大吾さん、木曽馬の保存と育成を行なっている木曽馬保存会事務局の中川剛さんが登壇した。

 この時代、機械に頼らず何故にあえて手間のかかる馬との生活を行なっているのか? そこには木々が密集する森の中で、自然を破壊しないよう小回りの効く馬搬の活用が重宝され、今はエコな観点から見直されつつあるという。

映像の中で描かれている活動を伝える

一方で集落の高齢化で馬を手放さなければならない現状や、生き物ゆえに当然世話もかかる。それでも自然との共生は何者にも変えられないようで、日焼けした彼らの表情が充実した日々を物語っていた。そんな彼らの話は新鮮であり、何より映画を通した新たな出会いと発見が楽しい。

ここに本映像祭の狙いがあるという。

「ただ映像を見せるのではなく、映像の中で描かれている活動を伝える。やはり環境問題に取り組んでいる人たちは熱い思いで携わっていますが、一人の思いというのは限られている。でも映像祭で製作者だけでなくこうした関係者を招くことで新たな出会いを呼び、次の作品へと繋がるかもしれないし、同様の環境活動をしている人たちへの刺激にもなります。映画の上映も大事ですけど、人を繋げることの方がより重要と思っています」(尾立さん)

若手の映像制作者の育成・支援の場として

 今年の特別プログラムは「森を活かす板倉建築-先人の知恵・元祖モバイルハウス」と題して、神社や穀物倉庫など日本古来の木造建築技術を応用した板倉建築に着目。短編『板倉建築の校舎-森とつながる都会のなかの学びの場』(2017)の上映と、筑波大学名誉教授で里山建築研究所主宰の安藤邦廣氏の講演が行われる。

 そして3月11日には、第3回で最高賞に当たるグリーンイメージ大賞を受賞した山田徹監督『新地町の漁師たち』が東京・ポレポレ東中野で公開される。東日本大震災や福島第一原子力発電所事故の影響で

仕事を奪われてしまった福島・新地町の漁師たちに約3年半に渡って密着した力作だ。 若手の映像制作者の育成・支援の場としても、着実に実を結んできているようだ。

●グリーンイメージ国際環境映像祭
http://green-image.jp

●グリーンフィルムネットワーク
http://greenfilmnet.org

●『新地町の漁師たち』公式HP
http://shinchi-ryoshi.businesscatalyst.com

グリーンイメージ国際環境映像祭は3月3日(金)〜5日(日)日比谷図書文化館コンベンションホールにて開催