国立がん研究センターと名古屋大学大学院・医学系研究科の共同研究グループは、2017年2月28日、卵巣がんの治療を困難にしている「腹膜(ふくまく)」への転移のメカニズムを、世界で初めて解明したと発表した。

腹膜はおなかの中で臓器を覆っている膜。卵巣がんが進行すると、腹膜にがん細胞がばらまかれたように広がって転移する「腹膜播種(ふくまくばんしゅ)」という現象が知られている。腹膜播種が発生すると治療が困難になり、再発率も高まる。

進行し治療が遅れると5年生存率が40%に低下

同センターの報道発表によると、卵巣がんは早期発見の場合、5年生存率(診断から5年後に生存している可能性)が90%だが、進行して治療が遅れると40%にまで低下するため、治療の妨げとなり、進行の目安ともなる腹膜播種のメカニズム解明が求められていたという。

研究グループはまずマウスでの調査から、卵巣がん細胞が分泌する「エクソソーム」という小さな袋状の物質が、腹膜を構成する成分である「中皮細胞」という細胞を破壊し、がんが転移しやすい状態にしていることを確認。さらに、この現象の原因となる遺伝子「MMP1」も突き止めた。

卵巣がん患者1000人のおなかに溜まっている「腹水」を解析したところ、MMP1が少なかった患者はその後も長期間生存していたのに対し、MMP1が多かった患者はその後再発や悪化によって死亡するケースが多いこともわかっている。

研究結果は、英科学誌「Nature Communications」の電子版に掲載される予定。