■「ヤマトは必要以上のサービスまで行っていた」

 宅配便大手のヤマト運輸が配達の"時間帯指定"を見直すことを検討している。


 具体的には、ヤマト運輸の利用者は午前中から午後9時の間を6つに分けた配達時間帯の中から指定できるが、比較的利用の少ない正午〜午後2時の時間帯の廃止するというもので、背景には「配達員の昼休憩時間の確保」「ネット通販の普及による宅配便取扱い個数の急増」「トラックドライバーなどの人手不足」といった要因がある。ヤマト運輸労働組合は今年の春闘で会社側に荷物引受量の抑制を要求、今後、労使双方による引受数や賃金を含めた交渉に入るという。

 国土交通省によると、宅配便の取扱個数は直近20年で3倍以上に増加、2015年度の37億4500万個に上っており、ヤマト運輸だけに限ると、今年度は約18億7000万個と、過去最高の取扱個数が見込まれている。

 物流業界に詳しいジャーナリストの森田富士夫氏はヤマトの見直し方針について「それほど驚きはしない。現状では必要以上のサービスまで行っていたので、やっと正常に戻るということ」と話す。

 2015年度、宅配便全体の取扱数の増加率3.6%だったのに対し、当時業界シェアの46.7%を占めていたヤマト運輸では6.7%の増加率となっており、「取扱い数の伸びに対して人手が追いついておらず、深刻な状況」(森田氏)とのことだ。

 日本国内の貨物輸送量は微減で推移しているが、ネット通販に限って見れば7.6%増、市場は9776億円も増えている(2015年)。ところが、「輸送料金が安すぎること」も配達員の負担を増やしているようだ。「Amazonなど、大量に出荷されるネット通販が非常に安い運賃で契約されていることも問題」と森田氏。年会費3900円を払えば送料がかからず、遅くとも翌日には荷物が届く「Amazonプライム」。その便利さゆえ、「まとめて」ではなく「細かいものを一つずつ」注文するケースが増えている。Amazonから撤退した佐川急便は結果的に利益率を上げたという。


 ヤマト運輸の引受数抑制によって他の業者に影響が出ることが考えられるが、森田氏は「佐川急便もおそらく値上げをして、荷物数の抑制を図るだろう。一方、日本郵便はそれほど人員が不足していないので値上げはせず、市場のシェア率を高めるのでは」と予測。さらに、「自身で配達の仕組みを組めるくらい豊富な荷物量を扱っているネット通販などは、将来的に宅配業者を使わずに他の運送方法を使うようになってくるだろう」とも話した。


■「再配達」の効率化はできるのか

 配達員たちの最大の悩みのタネとなっているのが「再配達」だ。


 2015年のデータでは約37億個に上る総宅配便数の内、再配達となった荷物は約2割を占め、再配達のために年間で約9万人・約1億8千万時間が費やされている。


 現場では指定された再配達時間に合わせるため、たった一つの荷物を持って客の帰宅を1時間待つこともあるという。日持ちしない荷物の場合、日に何度も訪ね、エレベーターが無いマンションで30kg近いダンボールを抱えて往復することもあるそうだ。


 また、「宅配BOX」の前では、宅配業者同士の"奪い合い"まで起きているという。


 そんな中、福井県・あわら市では去年11月、集合住宅に置かれることの多い宅配BOXを100世帯に設置する実証実験を行った。

 市が発表した中間報告では、再配達率は設置前の49%から8%にまで減少。共同で実験を進めるパナソニックの分析によると、配達員の労働時間が65時間以上も削減できたという。実験は4月末までの予定で、最終的には再配達が700回以上減らせる見込みだということだ。


 森田氏も「時間帯指定だと2時間拘束されるため時間コストがかかるが、非対面式だと24時間受け取れるの受け取る側もで拘束されることがない」と、受け取る側にもメリットが大きいと指摘する。


 このほか、JR東日本は日本郵便・ヤマト運輸と連携、駅で受け取れるロッカーの設置を進めている。既に26駅29カ所に設置されており、今後は首都圏の100駅に設置すること目指している。宅配業者にとっては再配達のためのコスト削減にもつながり、利用者にとっては通勤・通学の途中で受け取ることができる。

 ネット通販の過去最大の伸びにより宅配システムが過渡期を迎えるいま、こうした対策の導入が急務だ。(AbemaTV/AbemaPrimeより)