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国立精神・神経医療研究センター(NCNP)は3月1日、C9ORF72遺伝子の非翻訳領域リピート異常伸長が原因の、筋萎縮側索硬化症(ALS)および前頭側頭型認知症(FTD)の病態に、C9ORF72と小胞輸送を担うRAB7L1 GTPアーゼとの相互作用の破綻が関与することを明らかにしたと発表した。

同成果は、NCNP 神経研究所遺伝子疾患治療研究部 青木吉嗣室長らの研究グループによるもので、2月23日付けの英国科学誌「BRAIN」オンライン版に掲載された。

ALSは、上位運動ニューロンと二次運動ニューロンが進行性に変性・消失することにより、次第に筋肉がやせて力が弱くなる難治性の運動ニューロン疾患。一方、FTDは物忘れ、性格の変化、言語や行動の障害などをひき起こす認知症。これまでの研究で、C9ORF72遺伝子の非翻訳領域のGGGGCCリピート配列の異常伸長が、孤発性および家族性ALSおよび前頭側頭型認知症の原因として最も多いことが報告されている。

C9ORF72の非翻訳領域リピート伸長が原因のALSおよびFTDの病態については、6塩基配列の異常伸長が原因のRNA毒性や、ハプロ不全等が病因の仮説として提示されていたが、C9ORF72タンパク質の機能と、非翻訳領域(イントロン1)の6塩基配列の異常伸長が神経変性をひきおこす分子機序は不明となっていた。

今回、同研究グループは、C9ORF72関連ALS/FTD患者由来の線維芽細胞とiPS運動ニューロンでは、エクソソーム等の細胞外小胞分泌数の減少と、マンノース6-リン酸受容体局在で評価したトランス・ゴルジ網の異常を認めることを見出した。また同患者由来iPS運動ニューロンを用いたウエスタンブロット解析で、C9ORF72タンパク質の有意な減少が認められたことから、同研究グループは、6塩基配列の異常伸長がC9ORF72のハプロ不全を引き起こすことで、C9ORF72連ALS/FTDに特徴的な細胞内のトランス・ゴルジ網異常、およびエクソソーム分泌異常が生じるとの仮説を立て検証を行った。

この結果、C9ORF72がRAB7L1 GTPアーゼのエフェクター・タンパク質として働き、エクソソーム分泌を制御する分子機構を発見。ヒト神経芽細胞腫SH-SY5Y細胞株を対象に、RAB7L1 GTPアーゼあるいはC9ORF72をノックダウンすると、C9ORF72関連ALS/FTDで認められる細胞内・外小胞輸送機構の異常が再現され、同症状はC9ORF72の過剰発現により正常化したという。

また、C9ORF72関連ALS/FTDで認められる細胞内・外小胞輸送異常は、C9ORF72遺伝子の6塩基配列の異常伸長が原因のC9ORF72タンパク質ハプロ不全により生じることを強く示唆する結果も得られた。ただし、同疾患病態をC9ORF72ハプロ不全だけで説明することは困難であり、RNA凝集体や異常ポリペプチド産生による毒性等の要因が重なり合ってC9ORF72遺伝子変異による病態が生じる可能性が考えられるとのこと。

同研究グループは今回の成果について、治療法のなかったC9ORF72関連のALSおよびFTDを対象とした新規核酸医薬の創生につながることが期待されると説明している。

(周藤瞳美)