約11カ月の改修工事を経て、熱海のMOA美術館がリニューアルオープンを迎えました。新しい展示スペースは、現代美術作家の杉本博司と建築家の榊田倫之が主宰する「新素材研究所」が手がけました。当館の所蔵品に合わせ、屋久杉や行者杉、黒漆喰や漆、畳といった、日本の伝統的かつ逸品の素材を用いて、作品をより美しく見せる空間を演出しています。

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現代の白い建築空間と和の素材の鮮やかなコントラストが、東洋・日本美術の新しい展示世界へと案内してくれます。なによりもすばらしいのは、低反射のガラスと壁の黒漆喰です。日本美術は保存上の観点からケース内での展示が基本となりますが、ここではその存在を忘れてしまうくらい透明度の高いガラスに、框もしつらえられて、自分の映り込みを気にせずじっくり作品と向かいあえます。

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オープニング記念は、創立者岡田茂吉のコレクションから厳選された名品展。この季節には外せない国宝の尾形光琳《紅白梅図屏風》も、MOA美術館が誇る、やはり国宝の野々村仁清《色絵藤花文茶壺》も、新しい展示空間での再会です。そのほか、平安の三蹟と謳われた藤原行成ら、能書家の書を集めた手鑑「翰墨城」や江戸時代の風俗画の名品《湯女図》など、国宝、重要文化財指定の作品が並ぶ空間は豪華そのもの。

2015年の光琳300年忌記念特別展「燕子花と紅白梅 光琳アート 光琳と現代美術」に合わせて杉本が制作した《月下紅白梅図》もふたたび展示され、《紅白梅図屏風》とともに観られるいまいちどのチャンスです。

そして、杉本博司を世界に知らしめた代表作「海景」シリーズから、熱海の海を撮影した《海景―ATAMI》や、三十三間堂の千手観音の写真を映像化した《加速する仏》もMOA美術館所蔵の仏教美術とともに展示されます。

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杉本の東洋・日本美術の解釈に彩られ、伝統と最新技術の融合で展示される名品の数々、今後もリニューアル記念の企画が目白押しです。季節もよくなっていくこれから、ちょっとした旅の目的地としても、要チェックです。

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美術館入り口にも注目です。室町時代の美意識を体現するものとして、杉本博司が選んだのは
「漆」でした。桃山時代に流行した根来塗の意匠「片身替」をコンセプトに、人間国宝の
室瀬和美が制作した艶やかな4mの扉が迎えてくれます。 美術館入り口  
Photo: Masaki Ogawa/Courtesy of MOA Museum of Art 
Design Architect: Hiroshi Sugimoto+Tomoyuki Sakakida/NMRL


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天正14(1586)年に豊臣秀吉が御所に持ち込み正親町天皇に茶を献じたと伝えられる組み立て式の黄金の茶室。公家の日記などの資料から復元されたものです。すべてがまばゆい金色に光る、究極の豪奢を体感してください。 「黄金の茶室」 復元 会場展示から


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麻縁の畳に樹齢数百年の行者杉を配した展示ケースは、床の間に置かれているかのような落ち着きをもたらします。《佐竹本三十六歌仙切》、明兆の《白衣観音図》から、別室では勝川春章や葛飾北斎の肉筆浮世絵たちまで豪華なラインナップです。 第一展示室ケース Photo: Masaki Ogawa/Courtesy of MOA Museum of Art Design Architect: Hiroshi Sugimoto+Tomoyuki Sakakida/NMRL


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設計を担当した杉本の「海景」シリーズから、リニューアルオープンにふさわしい「熱海」をテーマにした作品たちも並びます。日本と東洋の古美術から現代アートまで。これからのMOA美術館を象徴する組合せの展示内容です。 杉本博司 《海景―ATAMI》 展示風景


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2015年に「尾形光琳300年忌記念特別展」を機に、杉本が撮影・制作した作品が、今回ふたたびお目見えします。金地の明るい光琳作と冷ややかな月光を思わせる杉本作、新しい空間でともに観られる嬉しいチャンスです。 杉本博司 《月下紅白梅図》 2014年 プラチナ・パラディウム・プリント 会場展示から




「リニューアル記念名品展 +杉本博司「海景―ATAMI」」

〜3月14日(火) 
開催場所:MOA美術館
熱海市桃山町26-2
開館時間:9時30分〜16時30分(入館は16時まで)
会期中無休
TEL:0557-84-2511
観覧料:一般1,600円

http://www.moaart.or.jp


※当記事は「Pen Online」からの転載記事です。

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坂本 裕子 ※Pen Onlineより転載