2月28日、AFCチャンピオンズリーグ(ACL)のグループリーグ第2戦が行なわれ、浦和レッズがFCソウル(韓国)を5-2で下した。浦和はこれでACL2連勝の勝ち点6。しかも、得失点差プラス7(得点9、失点2)という大きなアドバンテージを手に、グループFの首位を走っている。

 浦和にとってソウルは、昨季のACL決勝トーナメント1回戦で対戦し、アジア制覇への道を断たれた因縁の相手。そんなチームに対し(スコアから想像するほど浦和の出来がよかったわけではないが)、大量得点を奪って勝利できたことの価値は高い。

 しかも、浦和は現在、2月18日のFUJI XEROX SUPER CUP(ゼロックス杯)を皮切りに、ACL、J1開幕戦、そしてこの日のACLと、中2、3日の間隔で試合が続く、過密日程の真っただ中にある。J1開幕戦では横浜F・マリノスに逆転負け(2-3)を喫していただけに、悪い流れを引きずらなかったことも大きかった。

 そうした厳しいスケジュールのなか、キャプテンのMF阿部勇樹を外すなど、横浜FM戦から先発メンバー4名を入れ替えて臨んだ浦和だったが、チームに新たなオプションを加えられたという意味でも、ソウル戦は大きな価値を持つ試合となった。

 新たなオプションとはすなわち、MF駒井善成のボランチ起用である。



ACLのFCソウル戦で活躍した「ボランチ」の駒井善成 昨季、京都サンガから移籍してきた駒井の最大の武器は、切れのいいドリブル。京都のアカデミー(育成組織)に所属していた10代のころから、高速ドリブラーとして名を馳せた駒井は、浦和加入後も3-4-2-1の「4」の右サイドを主戦場とし、縦への突破を期待されてきた。実際、ゼロックス杯ではそのポジションで先発し、ドリブルで何度かチャンスを作っている。

 だからこそ、駒井がボランチとして先発のピッチに立っているのを見て、少々意外な印象を受けたわけだが、本人曰く、「京都でも最後のシーズン(2015年)はずっとボランチで出ていた。自分的にはボランチも好きなポジション」だという。事実、この抜擢は想像以上にハマっていた。

 ペトロヴィッチ監督にしても、駒井のボランチ起用を突然の思いつきで決めたわけではなかった。饒舌(じょうぜつ)な指揮官は「私は(選手を見極める)いい眼を持っている自信がある」と言い切り、こう語る。

「駒井にはどのポジションが適当なのか、十分に理解していたつもりだ。ただし、あのポジション(ボランチ)はチーム全体の戦術を理解していないと務まらない。若い選手を安易に使って失敗してはいけないので、しっかりとその時期が来たときに起用することが大事。どのタイミングで起用するかを判断してきたが、今日がそのタイミングだった」

 満を持してのボランチ起用に応えるべく、当然、駒井はチーム内における役割を頭に置いてピッチに立った。

 まずボランチである以上、相手のカウンターに備えてリスク管理を忘れてはならない。「モリくん(DF森脇良太)が上がったときのカバーとかはうまくできた」と振り返ったように、守備のバランスを崩さないよう腐心した。

 と同時に、やはり浦和の特徴は自らがボールを支配して、攻撃的に試合を進めること。「いかにシャドー(2列目のふたり)にいいボールを入れるか」を第一に考え、「自分がどこでボールを受ければ、シャドーへ縦パスを入れやすいか」だけでなく、「わざとスペースを空けて、そこを他の選手に使わせる」ことも意識しながらプレーしていたという。

 だが、ただチーム戦術に沿って無難にプレーするだけなら、あえて駒井をボランチで使う意味はない。「ミシャ(ペトロヴィッチ監督)からは(ドリブルでボールを)前に運んでいけと言われている」というように、彼ならではのアクセントを加えられてこその抜擢である。駒井が熱っぽく語る。

「ボランチからでも(相手選手を)かわしながら(ボールを)運んでいくのが理想。イニエスタ(バルセロナ)とか、クロース(レアル・マドリード)とかは、パスのイメージがあるけれど、グッとドリブルで運んでいける。今の世界のボランチはそうやってゲームを変えられる。昨年のクラブW杯でクロースを見ていて、これが今のボランチなのかな、と思った」

 浦和の攻撃の特徴は、両サイドの選手を高い位置に置き、長いサイドチェンジのパスをまじえながらピッチを横に広く使うことにある。駒井も自身の経験から「うちのサイド(からの攻撃)は1対1でどれだけ勝てるか(が大切)。そこで負けていたら、自分たちのサッカーにならない」と語るほど、サイド攻撃の重要性を感じている。

 しかし、その一方で、サイドから単調な攻撃を繰り返すだけでは手詰まりになってしまうことも理解している。だからこそ、「ボランチから運んで(相手選手を)1枚はがせれば、サイドの選手も楽になる。もし(相手がサイドに引っ張られて)真ん中が空いたら自分がそこから崩して、逆に相手が絞ってきたらまたサイドとか、そういう攻撃を狙っていきたい」。駒井が言うように、サイドからの突破だけでなく、中央からドリブルで敵陣に侵入できる選手がボランチにいることは、相手ディフェンスにとって大きな脅威となるはずだ。

 加えて言えば、駒井は守備時のボールに対するアプローチも、意外なほど速かった。最短距離で一気にボールとの距離を詰め、ソウルの攻撃の芽をつぶすことに成功していた。

 この試合では浦和移籍後の初ゴールも決め、「ゴールを決めて勝つことが、こんなに気持ちいいのかと思った」と笑顔を見せた駒井だが、ゴールはいわばオマケにすぎない。この起用が、単に攻撃面だけに特化したオプションにとどまらなかったことは、新鮮な驚きであり、発見だった。

 言うまでもなく、浦和のボランチは、阿部をはじめ、柏木陽介、青木拓矢、長澤和輝、矢島慎也など、その顔ぶれは多士済々。選手層の厚い浦和のなかでも最激戦区と言ってもよく、2枠しかないレギュラーポジションはおろか、2番手、3番手の座をつかむことすら簡単ではない。駒井自身、「(今後の起用は)ミシャ次第だけど、壁は厚い。自分は緊急事態要員だろう」と言うほどだ。

 それでも、この日のプレーぶりを見る限り、緊急事態だけにしか使われないのではもったいない。チームの新たな武器となりうる可能性を秘めた起用に感じられた。

 昨季のACLで敗れた難敵との対戦とあって、「相手が相手なので、ちょっと緊張していた」という駒井。それだけに「今日は(ドリブルでボールを運ぶことが)少なかったが、(ボランチで試合を)やっていけば余裕も出て、もっと出せるようになると思う」と話す。

 ドリブラーのボランチ起用。J1とACLの二冠を狙う浦和が、新たなオプションを手にしたことは間違いない。

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