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宅配トラックからドローンを飛ばして軒先まで荷物を輸送する試みが始まるなど、ドローンには物資の輸送手段を広げる役目としての期待も集まっています。そんな中、サンフランシスコのスタートアップが開発している飛行機型ドローン「APSARA」はGPSを頼りに目的地まで滑空して確実に物資を届けることができるうえに、最終的には科学的に分解されて土に帰るという特長を持とうとしています。

The Brilliant Drone That’ll Deliver Medicine-Then Rot Away | WIRED

https://www.wired.com/2017/02/brilliant-drone-thatll-deliver-medicine-rot-away/

開発が進められるAPSARAがどのようなドローンなのかは、以下のムービーを見るとよくわかります。

This Drone is Designed to Save Lives Then Disappear | WIRED - YouTube

段ボールを組み立てて箱のようなものを組み立てる男性。



ガムテープで各部を貼り合わせていくと……



翼を持つ飛行機が完成しました。これが自然に還るドローン、APSARAです。



サンフランシスコのスタートアップ「Otherlab」およびそこからスピンアウトした企業「Everfly」でプロジェクトエンジニアを務めるスター・シンプソン氏は「これは翼の形をしたピザの箱みたいなものです」と語ります。OtherlabはアメリカのDARPA(国防高等研究計画局)から資金援助を受けている企業でもあります。



APSARAは機体中央にカーゴスペースを持ち、この中に最大で2ポンド(約900グラム)の荷物を乗せて飛行することが可能。



その姿は、アメリカ空軍が運用するステルス爆撃機「B-2」のよう。ただしこの機体は爆弾ではなく、食料や医薬品を投下するために使われます。



機体を見ればわかるように、APSARAは動力となるプロペラを持ちません。そのため、物資を運搬する際には大型の飛行機などで現地まで何百機、何千機というAPSARAを運び、上空から投下してグライダーのように滑空させます。その際、本体内に内蔵したGPSセンサーと翼を操作するモーターを使い、指定された座標の位置に機体を誘導する仕組みがとられています。



最大の目的は、機体を回収する手間を省き、運用コストを下げるというもの。そのため、機体にはコストのかかるプラスチックや金属は使われず、最終的にはキノコの繊維状の組織「ミセリウム」をもとにした素材が使われる予定になっています。



災害救助や人道支援といった現場での使用が考えられています。



Everflyのプロジェクトリーダー、ミケル・テイラー氏は「APSARAは物資を送り届けるという任務を果たした後、自然由来の素材で作られた機体は次第に分解され、土に還って環境に与える影響を最小限にとどめることとなります」と語ります。



物資を輸送するだけであれば、より搭載量の多いパラシュートに量的に勝つことはできません。しかし、パラシュートは基本的に「風任せ」であり、落下地点が崖の底や川の中、森の奥深くなどになってしまうこともあります。



APSARAが実現しているのは、電子制御による緻密なコントロール。そのため、狙った地点にGPSで正確に誘導し、確実に物資を届けることが可能になります。ちなみに、現時点では一般的な電子部品が使われていますが、DARPAでは使用後に痕跡を残さない電子回路を開発するプロジェクトを別で進めています。これらの技術を組み合わせることで、使った後は自然に還って跡形もなくなるドローンが実現するかもしれないというわけです。



また、折り紙のように組み立て式にすることにもメリットが存在します。



シート状のまま輸送し、現地で組み立てる方法を取り入れることで、輸送のコストを大幅に削減することも可能。



同社ではすでに段ボール製のAPSARAの飛行テストを実施しています。テストでは、以下のようにマルチコプターのドローンにAPSARAをつり下げ、上空で切り離して目的の地点まで誘導させるという検証が行われている模様。



テストでは1機だけの投下ですが、考えられている実際の使用シーンは、何千機というAPSARAを上空から投下して物資を届けるというもの。そして到着後のAPSARAは数日で自然に還るということで、環境にも負担の少ない輸送手段ということになりそうです。